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カミングアウトコンビニ / 毎週ショートショートnote

コンビニと言うより駄菓子屋みたいな雑多な店に表情の無い女が静かに座っていた。
「どうぞ、お入りください。」
入り口で戸惑う俺を中へと誘う。
「飲み物でしたら一番奥に。他にも何でもありますよ。」
店は薄暗いが確かに何でもありそうだ。中に入り奥へと進むのをじっと見ていた女は急いで店の外に出ると飛び跳ねて喜んでいる。
「この店、誰か代わりが来るまで出られないの。あなたには悪いけどやっと帰れるわ。」
地味だった女は青空の下。俺は外に出ようとしたが見えない壁があるようで何かがぶつかってしまう。仕方なく眩しいほどの笑顔の女に手を振る。
「…怒らないの?」
「俺は仕事も家もなくして、どうしようかとただ歩いていたんだ。だからここに囚われても大丈夫。君は帰っていいよ。」
さっき笑顔だった女がポロリと泣いた。
「優しいのね。私、時々店に来るわ。」
こうして俺は家と仕事と彼女を手に入れた。
今ではカミングアウトコンビニはまぁまぁ繁盛している。

コンビニと言うより駄菓子屋って事で、駄菓子屋さんのイラストをお借りしました。

#毎週ショートショートnote

#カミングアウトコンビニ

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