しゃべる未曾有 / 毎週ショートショートnote

「さぁさぁ皆さん、しゃべる未曾有だよ！」
祭りの屋台小屋の前で背の低い男が大声を張り上げている。
「さぁお兄さん達どうぞ！お代は帰りでいいからさ。面白くなかったら払わなくていいよ。」
男に手招きされ僕たちは入ってみることにした。

狭い小屋の中で椅子代わりの木箱に腰掛ける。僕たちの他にも数名入ると正面の黒いカーテンが開かれた。そこにはテレビが一台あるだけだ。
「では手始めに、未曾有の河童です。みなさんコンニチワ。僕は河童だよ。」
画面には手作り感たっぷりの河童のぬいぐるみが映る。口をパクパク動かしているが映像と声が合わない。
「私は未曾有の招き猫娘。」
『未曾有の』をつけただけの子供騙しが続く。
「何だよ、これ。いくらお祭りだからって酷すぎる。」
「お金は絶対に払わないぞ。」
客達が文句を言い出し立ち上がると小屋の電気がついた。
いつのまにか周囲は怖そうな男達に囲まれていた。
「はい、未曾有の恐怖ね。一人五百円。」

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