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コロポックルの箱庭

うーん、と大きく伸びをして、借りてきてから3時間ずっと読んでいた本を置いた。コロポックルが出てくる本だ。その前は妖精の本を読んでいたしコビトが主役のアニメ映画も熱心に見ていた。サキちゃんは今コビトに夢中らしい。

ノートと鉛筆を持ってくると『はこにわ せっけいず』と題名を書き、絵を描き始めた。箱庭を作ってコロポックルを見つけるつもりだろう。定規なんかは使わずにササッと大きな四角を書いて、中にギザギザしたものと長い蛇みたいな線と三角屋根の家を書いた。「よし。」サキちゃんは満足そうに設計図を眺めているが、家以外全く何を書いたのかは理解出来なかった。

次にお菓子の空き箱をもらってくると庭へ出て行った。窓から見ていると箱に土を詰めている。高低差をつけて、適当な雑草をちぎって挿した。設計図のギザギザは草のつもりだったようだ。ちぎって挿しただけなので土の上でみんな倒れてしまう。それでもサキちゃんは構わずに今度は土の上に蛇みたいな線を指で書いて水を流した。川を作りたかったようだが、広がって土に吸い込まれ、お菓子の箱はグチャグチヤになった。サキちゃんは泣きながら家に入り、お母さんの所へ走って行った。

もう諦めたかな。と設計図を眺めていると、また新しいお菓子の箱を持ってやってきた。今度は土や水は入れず折り紙を切ったり貼ったり。おそらくテーブルやベッドを作り、箱の中に仕切りを作っている。これじゃ箱庭と言うよりお人形遊びのマンションの一室みたいだと思った。

それでもサキちゃんは満足そうに折り紙の家具を配置して机の上に置いた。手を合わせて「コロポックルさんが来てくれますように」と何かに祈った。すごく微笑ましいけれど、折り紙の家具じゃ使えない。だいたい、サイズが小さすぎる。コビトって言ってもそんなには小さくないんだぞ!

夜、サキちゃんが寝てから、折り紙の家具にウサギの家族(の人形)を入れた。このウサギの家がコビトサイズ的にちょうどいいのだ。だからウサギをサキちゃんの箱庭に引っ越しさせて、ウサギの家を広々と使うことにした。ほらやっぱり。ウサギ家族にも折り紙家具は小さすぎ。けれどウサギがいなくなった分、家の中は広々と快適だ。うーん、今日はゆっくり眠れそう。

「…ママ、どうしてウサちゃんを箱庭に入れたの?これじゃコロポックルさん入れないよ。」朝、サキちゃんが箱庭を見ている隙に大きなぬいぐるみ達の陰に隠れる。遠くで「ママ触ってないよ」と聞こえる。

「おかしいなぁ。もしかして、コロポックルさんがウサちゃんと遊んだのかな?」サキちゃんは不思議そうに首を傾げていた。


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