だんだん高くなるドライブ / 毎週ショートショートnote
「やっぱり帰ろうよ。」
夜の湖へ抜ける道は木々に覆われて真っ暗で他に車もいない。
「道、間違えたんじゃない?」
「一本道だったよ。」
道幅の狭い悪路で目が離せず、不安そうな薫の顔も見てやれない。
「…あれ、なに?」
前方に黒い塊が見えた。ヘッドライトに照らされ道路を右から左へとゆっくり滑るように移動している。大きさは中型犬くらいだがなめらかな動きは動物では無さそうだ。
黒い物体は左の木の辺りでふわりと浮いた。
「!!!」
車を止めて見ていると黒い物体はゆっくり上昇して幹の途中で止まった。表面には光沢があり、形は長方形から丸へと変化している。
「分かった!ゴミ袋だ。」
目に涙をためた薫が震える声で聞き返す。
「ほんとうに?」
「きっとキャンプで来た奴がゴミ袋を飛ばしたんだろうよ。」
薫を安心させようと横を向く。
ーまだ薫の顔を見てなかったのに、目に涙を溜めてるってどうして分かったんだろう。
助手席には何も無かった。
黒い物体がゆっくりと振り向く。
「ホントウニ?」
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