うちで一番古い布と、あきない世傳
ランチョンマットについて
うちで一番古いものは、若松河田駅前にある備後屋民藝店というお店で購入した小さなランチョンマットです。
備後屋民藝店は、地下から4階まで、テーマごとに民藝品が並んでいて、気軽に購入できるものもあります。
海外からのお客さんにもおすすめです。
そのお店は、父が最後に入院していた病院のすぐそばにありました。
私は仕事のあと、できる限り病院に通いました。
たまに明るいうちに若松河田駅で降りると、まだお店は開いていて、中をのぞくと重い気持ちをほんの少しだけ軽くしてくれました。
1階は紙製品が並ぶフロアで、紙製品が好きな私は、木版画の祝儀袋や、ポチ袋などを眺めて少しづつ買うのが好きでした。
冷静に考えると、祝儀袋を買うような状況ではないのですが。
京都の鳩居堂のポチ袋のような可愛らしさも好きなのですが、洗練されたデザインにとても穏やかな気持ちになりました。
一度だけ上の階まで上がったことがあって、自分のために小さなランチョンマットを買いました。江戸時代の木綿藍染の着物(浴衣?)をリメイクしたもので、藍染の布で縁どりしてあります。
長い時間を経て、たくさんの人が使った品々は、今自分が直面しているこのつらい時間もきっと、乗り越えられると慰められるようでした。
残念ながら、父はそのままなくなりました。
マットの詳細は、家族の誰も知らないままですが、トイレの飾り棚に置いているので、毎日なんとなく目にします。
もはや、”ランチョン”ではない(笑)。
菊柄のテーブルクロスの上に、トルコの藍色に絵付けされた皿を池に見立て、タイの花のキャンドル(蘭?)を浮かべて、その上にドイツの小さな小さなアマガエルが遊んでいます。
バンコクのウィークエンドマーケットで買った置物や、ドイツのクリスマスマーケットのお土産のキャンドル、いろんな場所からやってきた、ごちゃごちゃの世界ですが、不思議なことに、藍色が引き締めてくれます。
あきない世傳と浴衣
あきない世傳 金と銀 高田郁著 ハルキ文庫 1~13巻
数か月かけてゆっくりとこの小説を楽しんでいたのですが、物語後半、関西出身の呉服を扱う店の女主人が江戸に拠点を移します。
そのなかで、湯上りに羽織る程度だった浴衣を江戸の庶民に向けて売り出すエピソードがあります。
綿糸の生産者→
生地を織る人→
模様を考える人→
その型を作る型抜き職人→
藍染めの職人→
浴衣を縫う人→
そしてそれを商う店、組合、行商→
購入者……
それぞれの立場の人の背景と、物をつなぐ縁、大切に思う気持ちを、時間をかけて、あちこちと登場人物と物を移動しながら丁寧に描いています。
【女性の社会進出】主人公が女店主となるまで。大坂から江戸にかけて女性が旅をするということ。
【縁】スタッフが成長する様子、切りたくても切れない縁
【経営】資金の調達、ライバルとの勝負
【着物のプロモーション】帯指南、人形浄瑠璃や歌舞伎と着物、相撲と浴衣や手書き文字
【大坂と江戸】職人の街 江戸の暮し(渋め)VS 商人の街の大坂暮し(鮮やか)、味付けの違い、行事の違い
ざっと拾い上げただけでも、たくさんあって、どんな切り口でも楽しめます。
途中で図書館で着物や江戸文様の本を借りたり、相撲の歴史が気になったり。江戸の地図もあると楽しいです。
知らなかったことだらけなので、他の本と並行しながら、ゆっくり、じっくり半年以上かけて読み進めています。
いよいよ最終巻。
もったいなくて、まだ読めないでいます。
先日、書店で著者高田さんのイラストのPOPを見て、登場人物たちが自分のイメージと近いので、嬉しくなりました。
この布も、もともとは誰かが作って、縫って、商いを経て、身に着けていたもの。、をリメイクしたランチョンマットなのです。
改めて、江戸時代を身近に感じられるようになりました。
洗濯機でトイレのタオルと一緒に洗って申し訳ない。
今後は手洗いします。
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