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指揮者のペルソナは神隠し

藪からスティックに詩をお届けします。

今回は言葉の添え木様のお題で作った詩3編と、詩の朗読企画「めづる夜」に投稿した詩1編、hoshiboshi様主催の140字小説コンテストに投稿した作品を2つ、色々詰め合わせたバラエティパックをお送りいたします。

Twitterのスペース上で開催した朗読会「めづる夜」の録音はまだ残っておりますので、気になる方はぜひぜひ。「#めづる夜」で検索すると録音アーカイブが出てきますよ~(´▽`*)




指揮者

息を吸う 

息と弦を押し出し 

波乗りショーが始まる 

十三弦と十七弦の船団には指揮者がいない 

沈む船を支え 
沈んでは引き上げられ 

エネルギーを交換して 

現在地を叫び合う 

生きている、と発し合う 

大波の頂上で見えるよ 

幻の指揮者 

次の息を吸って 

テーマ「め」(詩の朗読企画「めづる夜」投稿作品)

芽と芽と芽 

咲くかな、咲こうかな、まだ咲かない 

増える増えるよパステルカラー 

くしゃみが聞こえる 

お酒の香り 

涙声と歓声 

南風に直感 

花になっても僕ら変わらない 

咲こうか、咲こう、そろそろ咲こうか 

芽と芽と芽 


神隠し

眠っている間は 
誰もが神隠し 

すべり台に訳も分からず乗せられて 

記憶の粒子が前から後ろへ 

風か何かに、おでこを撫でられて 

起きている間は 
忘却の神隠し 

夢の浮き世 
すべり台に春風 


ペルソナ

銅鑼どらの連打が弾ける 

ペルソナは代わる代わる、顔を出す 

鮮やかな早業 

称賛しそうな口を閉じる 

君の変面はショーではない 

今生限定の真剣な遊戯 

何かを代償にして得たもの 

称賛の代わりに 

どら焼きアイスをおごるよ 

君の笑うペルソナは桜色 



140字小説コンテスト投稿作品1(1月の星々、テーマ「定」、水原月として投稿)

初めて気球に乗った時、気分は砕氷船だった。
冷たい大気を割り開いて、絶対に辿り着けない高度まで、ぐんぐん進んだ。 気球操縦士の私は、今日もお客さんを乗せて気球を飛ばす。
「気球にのって~どこまでいこう~」
定番の曲を皆で歌う。どこまでも行こう。雲を越え、星を越え、宇宙も越えるのだ。



140字小説コンテスト投稿作品2(2月の星々、テーマ「分」、水原月として投稿)

ヒトゲノムはすっかりデジタルに分解されて、現実は虚像の世界の中に収まった。 役所に申請すれば、理想の人間をいくらでも作れる。性別や年齢も自由自在だ。
しかし、虚像の理想郷には、まだまだ遠い。
創造主に忘れ去られた人格データを渡り歩きながら、私は第二の虚像世界を作り続ける。



お気に入りいただけましたら、よろしくお願いいたします。作品で還元できるように精進いたします。