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ケア日記ーシソ摘み 10月11日

庭のシソを摘んで干してゆかりをつくろうと思い、ケア日記を書きたくなった土庫澄子です 今日はうすぐもり、暑くも寒くもなく庭仕事にはうってつけの日でした

朝から車で妹がやってきました 急に寒くなった2、3日前、寒気がしたというのでもしや母に風邪の気配を移してはいけないと家にあがらないまま庭でシソを摘みはじめました

ゆかりはシソの葉からつくるとあちこちに書いてあります なぜか母は昨日からゆかりはシソの実からつくるといってゆずりません

たぶん、ちょっとした思い違いなのでしょうけれどいったんこうと思ってしまうとなかなかどうしてになるのです

「だってママ、葉っぱを干してお塩でもむのよ 去年作ったじゃない?」
「ちがうわゆかりは実からつくるのよ」
「実を干してもむの?」
「干すだけよ」

母いわく、シソの実を干すとゆかりになるらしい わたしもよくわからず母は母でいいだしたらどうにもならないので早々に降参することにしました 家庭は平和が一番です

「わかったわ それなら実と葉を干してゆかりにしましょうよ」
「そう? それならいいわ」

妹とわたしは実と葉っぱの両方を摘みました 実はもう茶色く固くなってきたのがちらほら 蚊取り線香を脇においてシソを次々摘んでいるとシソの香りが染み込んできて気持ちいいのです

実がちょうどいい感じにプチプチとしている 摘んだざるのなかは実も葉も一緒くたに入っています 

家にあがり居間にいる母にひとざる渡して実をしごくのをやってもらいました 母はやりたくてさっきからウズウズして待っていました 仕事大好きです

「ママさん、ここにざる置いとくから、実をしごいてね 指真っ黒になるから手袋してよ」
「はいはい 実をしごいてゆかりにするのよね?」
「そうよ? そういってたじゃない? 実と葉っぱを一緒にゆかりにしてみましょうよ? 」

母は自信たっぷりだけど、シソの実って干すだけで都合よくふりかけのパウダーみたいになるんだろうか?よく干せばいいのかな? まあいいか失敗しても食べられるし味はいいはず

居間から庭に出てみると、プチプチとした実をしごきながら妹がいう

「あたし実を炊きたい これおいしいのよ!」
「ああそうねえ こないだ炊いたのより今日の実の方がプチプチよね 炊いたらきっと最高よね? ぜんぶゆかりにするよりすこし分けて実を炊かない?」

庭先で姉妹の談合成立 さっそく二人してしごいた実を別のボウルに分け始めました それはいいけど母が気になる すんなりとニッコリOKするかしら? きのうから言っている母の言い分を妹に伝えてみました

「でもねえきのうからずっと言ってるのよゆかりは実でつくるんだって しょうがないから実と葉っぱを一緒にゆかり作ろうって話してるのよ」
「へえ? 実なの? 実でゆかりつくるの? 葉っぱでしょ? 実は炊こうよ 話せばだいじょうぶだっておいしいもの」
「そうね そうよねえ。。」

妹の言葉に押されてもう一度家のなかをのぞくと、母は居間のテーブルに座り、ボウルをまえにシソの実をしごいている こんなときの母は一家の主婦としてわが意を得たり、満足そうな様子です 

わたしは、いつもの服を着てひとりで台所仕事をしている母を見ると、小さい頃からこうやって育ったんだなあと遠く思う癖があります 毎朝お弁当を作ってもらっていた幼稚園の頃をよく思い出します

母は肩を痛めてから力仕事は控えめですが、家の仕事が大好きなのは変わりません わが意を得たりの真っ最中で手先を動かしている母は自分の城で自由自在、頼もしい感じがします こんなときの母の姿は一番祖母に似ています よく割烹着を着ていた祖母と同じ空気感です 

父がいてもいなくても相変わらずな女三代の家仕事、まあ三代目はたいしたことありません(笑) 

母の手元をのぞきながら思い切って聞いてみました

「あのね 実をちょっと分けといてほしいのよ・・」
「え? 分ける? なんで?」
「実を炊きたいのよ だから少し分けて・・ね?」
「分ける? 実と葉と一緒にゆかりにするんじゃないの?」
「一緒でいい一緒でいいんだけど少しだけ炊きたいの 干すんじゃなくて」
「ゆかりじゃないの?」
「そうゆかりつくるの でもすこし分けて炊きたいの」
「どうすればいいの? 一緒じゃないの?」
「実をちょっと分けておいてほしいのよ」
「ゆかりは実でつくるんでしょ?」
「え? そうだとおもうけど。。」

気がつくと母の目は不安の色をしている 融通が利かないのではない 急にさっきとちがうことをいわれとっさに追いつかないのです 急に相手の話が変わるのは大の苦手です

なんだか母をふりまわしてかわいそうになってきました もう炊くのはよして全部ゆかりにしようかな うーんでも妹は炊きたいっていってるし今日の実は炊いたらきっとおいしい母だっておいしいっていうはずだわ。。

ぐるっと一周したあげく母にいいました

「ねえこうしない? 干す分と炊く分をちょっと分けたらどうかしら?炊く分は実だけでいいの 干す分は実と葉っぱね? どう? いいかしら?」
「なにいってるの? 分けるってなに? 一体どうしたの? なにかいけないの?」

もはやお手上げです 話し合ってもていねいに説明してもどうにもなりません

それでもやっぱり少しだけ実を炊きたい 猛暑のあいだ毎朝コーヒーをいれる前に水やりして良い実がたくさんできたのだもの

☕️☕️  ☕️☕️  ☕️☕️

ハラハラしながら不安げに見守る母の気持ちに沿いながら実と葉っぱを分けました ちっちゃい葉っぱはどっちでも大丈夫 

すっかりこんがらがっている母の目の前で、炊く分の実をお鍋に入れ、干す分の実と葉っぱを塩とショウガでもんで大ざるに並べました お鍋を母に渡しながらいいました

「これでいいの お鍋の方を炊いてね」
「ハイハイ お酒とみりんとお醤油ね」

母は安心したような笑顔になっていました そうとわかればまかせてよといわんばかり母はあっさりいそいそモードに戻りお鍋をもってキッチンに行きました 再び母の天下です 狼狽するのも安心するのもずいぶん単純です(笑) 

安心して天下をとるチャンスを虎視眈々と狙っているようにしかみえないとき、母は元気です 猫か三歳児か母かという感じです(=^・^=)

そんなこんなで母得意の味つけで実を炊き、ついでにおかずをつくって三人で夕食 おかずはフチャ八宝菜に露地茄子の煮びたし、お香は露地白菜とニンジンの浅漬けです 

フチャ八宝菜は、白菜🥬厚揚げ豆腐玉ネギ人参🥕万願寺とうがらし🌶しめじもやしお酒と根生姜に漬けたポークと角切りベーコンをゴマ油で炒め、鳥ガラ味覇甜麺醤お酒お醤油黒胡椒で味つけ 葛あんかけして出来上がり♪

女三人熱いお茶がすっかりおいしくなったといいながら妹は炊いた実をひと瓶もって帰りました

いつのまにか母は満足して眠ったらしいです 今日もなにをしたわけでもないけど無事に日曜日を過ごしました 

家にいても地図のない旅をしているよう 今日の旅はこれでよかったとわたしもひと安心 後悔のない一日を送れればじゅうぶんとおもっています

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ここまで読んでいただきましてありがとうございました☆



 

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