プレゼントークー翻訳中の翻訳をまだ考えている

こんにちは土庫澄子(トクラスミコ)です 去年12月に開催されたカネミ油症集会のために書いたプレゼントーク原稿を英語に訳そうと思い立って半月あまり 下訳をやりながら翻訳ってなんだろうという問いにつきあたるとは夢にも思わずw

下訳は直訳でなく、ハリネズミが稿を起こしたときに意図的に落とした論理的な構成をもどしながら作業してきました ハリネズミになった件は、前の記事をご覧ください

気がついたところを補足しながらやっていますと、やっぱりどうもなんか変だと感じるのです 座りがわるいというのか、この翻訳って誰に向かってやっているのだろう。。

前にも書きましたが、プレゼントークはカネミ油症の被害者の方たちに向けて書いています 事件が発覚して53年、救済法ができて9年になるカネミ油症の救済問題を法律の目で見たときに(このプレゼンでわたしはかつてPL法担当者として役所で働き、その後は在野の研究者という役割を担っています)キーワードとなるいくつかのコトバを入れ、それらの学術的な議論について余計な深入りをせず、必要とおもわれる前提は挨拶程度にして、いままでカネミ油症被害者支援の文脈ではっきり語られなかったらしい(←本番直前になって知りましたが、実に驚きでした)結論を明快に伝えることが主眼です

被害救済が問題となる文脈ではあるかないかの結論は天下分け目の天王山ですから、日本語だからといってイエスとノーをあいまいにする表現は避けるべきと考えていました 

準備をしていたときのハリネズミの胸の内を率直にいいますと、コロナ禍が加わってなかなかリアルで会えない被害者の方同士の親睦をかねた集会なので、オンラインで再会して旧交をあたためあう被害者の方々が楽に聞ける話をしたい、もっと欲をいえば怒りと諦めの淵から少しでも抜け出して楽になってほしいと思っていました ひとつひとつ順を追って考えていけば救済は見えてくるはずだという認識を共有してほしかったのです

話のどこかで「あのひといまなんて言ってたの? あんなコトバ知らないわ! わたしたちの会場に出てきて何が言いたいの!?」と怪訝に思われてしまうと、受け手のエンジンが止まって先の話がまるで腑に落ちなくなるとおもいました 2,3のリアクションをいただいたほかは、残念ながら実際どのように受けとめていただけたかわかりません ほんとうはまるめてもなおわかりにくかったところを指摘していただけるとよかったとおもいます

専門的というのか理論的に難解な角張ったところや、半世紀もの間に複雑に入り組んでほどく糸口がみえなくなったような諸事情、研究の日が浅いことの釈明や、法律以外は素人なので本来は言及すべきでない非専門家としてのことわりなどほとんどすべて取り去って、約30分という限られた時間のなかでいま被害者の方々に一番伝えたい部分を肩の力を抜いて楽に聞いていただけるように、それだけを思って集会の直前まで手元の原稿に手を入れていました

ようするに一語でもややこしそうなコトバを見つけては削り、まるめることばかりやっていました 助走的な論理展開よりゴールの結論重視です たしかにこれが一種の翻訳だったといえばそうかもしれません。。ハバーマスをもじっていえば、法学分野の言語を材料に組み立てられた脳内ペーパーを日常言語空間でのコミュニケーションに使えるように翻訳したという感じでしょうか 

下訳をしながら、このときの一種の翻訳をどう呼び戻すか、それだけでなく、英語で伝えたい相手が油症被害者ではなく、カネミ油症というダイオキシンが日常の食品を通じて人体に与えた深刻な影響とその救済に関心をもつ、あるいはもつ可能性がある英語圏の人々だというあたりが気になるわけです

しかしそうだからといって、画面越しに初対面の方が多かった油症被害者の方々に向けたプレゼンですというシーンが、翻訳をすると薄まってしまうのもどうかとおもえます 自分で画面操作しながらのオンラインプレゼン中は聞き手の反応をリアルタイムでキャッチできないこともあり、話し手が余計にハリネズミなのはともかくシーンが消えてしまっては元も子もないわけです 発話の文脈までいじっては変かなと感じます

プレゼントークは話し手の経験や研究をベースにして法律や裁判の話などをしていますので、まずは自分で英語に下訳してみようとはじめたのですが、いざとなるとひたすら判例を読んで分析する研究とは一味ちがう面白さがあります

そうそう、英文原稿をチェックしてくれる有難いアプリがあるそうで、下訳がすんだらお世話になりたいと楽しみにしています

土の中にいたモグラがちょっと顔を出したら気持ちよい緑の風が吹く広々とした原っぱに出たので嬉しくなってあちこち歩いてみる感じでしょうか 毛を逆立てたハリネズミからモグラっぽくなりました おまけに〆切があるでなし シロツメクサでも摘みながらぽちぽちいきます

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