『ほの暗い永久から出でて』

今日は物語作家の上橋菜穂子さんと医師の津田篤太郎さんの往復書簡が一冊になっている『ほの暗い永久から出でて』を読んだ。

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上橋さんといえば、『守り人シリーズ』『獣の奏者』『鹿の王』などシリーズものだけでもこれだけ色々と書いてらっしゃる作家さんで、お話し好きのわたくしとしてはほぼすべて読んでいる。どれも面白い。超ど級に面白い。読んでるときに心がざわざわ来るような話はなかなかないもんだ。

副題の「生と死を巡る対談」の通り、生命について、生物の進化について、そして後半ではAIについて、お二人の思考がつらつらと書かれている。

そのどれもがとても興味深い思考を呼び覚ますもので、とても楽しく読むことができた。

思考の行く先は楽しかったけど、津田医師は上橋さんのお母様がガンで入院なさった時、主治医ではないものの関わりがあったようで、そもそもこの書簡も上橋さんからの問いかけに津田医師が答えようとしたもの、らしい。上橋さんがお母様の看病をしていたときのこと、その時の思考の動きも書いてあるので、同じように母をガンでなくしたものとして自分の記憶も少し呼び起こされて来る感じがした。

ああしたらよかった、こうすれば、というのは言っても詮無き事なので普段は思考の表層に出ないようにしてるんだけど。

あと巻末には文庫版が出るにあたって巻末に「未曾有のパンデミックにどう向き合うか」「地球に宿る」という新章が追加されている。コロナを発症して重症化するときに発生することの多いサイトカインストームが体の細胞を破滅させていく様をコロナの感染拡大防止のために様々な職種が影響を受けてしまった様子になぞらえているところがなるほどと思った。集団ヒステリックとかパニック状態は免疫が暴走しているサイトカインストームなのか。暴走はしないに越したことはない。withコロナでもafterコロナでもいいから社会が落ち着きを取り戻す日々が来ますように。

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