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【朝湯】


白々と明けゆく空を
束の間の自由時間が
終わりを告げるのを
寂しく思いながら湯に浸かる

週末のイベントを
明日の会議資料を
数時間後の朝食を
思い浮かべながら

今頃眠っているあの人を
思い浮かべながら

湯に浮かぶ

掴めないものを掴もうとして
溺れそうなのだ

肩に注ぐ湯が留まらないように
流れていく景色が
記憶に残らないように

鮮明に
克明に

いつまでも私を捉えて離さない
いつかの景色を探している

身体が火照る

柔らかい布団を
思い浮かべながら

湯に浸かる

もう一眠り
あの人の夢に遊びに行く

湯から上がる

重たい身体をノロノロと動かして
もう少し
ぬるい湯にしておけば良かったと

もう少し
声が聞いていたかったと

僅かな後悔を
バスタオルに吸わせていく

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