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私のボイスドラマの作り方(2)仲間を見つけ、交流し、分担する

きちんと体系的に学んだわけではないのですが、ボイスドラマの作り方を連載しております。我流なので、正しいかどうか、効率的かどうかは、わかりません。参考にしていただけたら幸いです。

前回は、ラジオドラマの原作・シナリオになる作品の見つけ方について、書きました。

https://note.com/nekonotsuuro/n/n0f0b74fedbc2


次は、仲間とどう知り合い交流し、分担していくかの話です。

■2.仲間を見つけ、交流し、分担する

 

多才な方は、自分でいろいろな声の演技ができて、編集もでき、一人で作品を作りあげてしまえる方もいます。でも、多くの方は、そんなことはできません。

いろいろな人と協力して作る必要があるし、それが、楽しい部分でもあるのですが、どうやって仲間を見つけて、交流して、分担し協力しながらやっていくのか。

 

 ◆2-1.【作ることや演じることが好きな人のコミュニティ】

 

作品を作るのが好きな人、朗読が好きな人、演じるのが好きな人が集まっているコミュニティや【音声SNSサイト】があるので、そこで交流して、信頼関係を作ってから、依頼します。

ここを、どうお伝えしたらいいのか、悩んだのですが、私の場合、どうだったのか、経験談をお伝えします。

最初は、検索して、そういうサイトを見つけました。それで、たまたま夏で怪談特集をやっていたので、自分が体験した怪談などをスマホで録音して、配信しました(初心者なので、下手なのは承知の上です)。それから、ほかの配信されている方の作品を聞いて、感想をお伝えしたりしていました。

それから、自分で調べても、わからないことがあったら、親切そうな方にお聞きしました。それで、教えていただいて、そこで、また交流が広がります。

そうすると、少しずつ、そのアカウントのフォロワーが増えていきました。

そのサイトには、シナリオを書くサークルもあったので、そこに入って、生まれて初めてシナリオを書きました。

そこでまた、読んだり演じたりすることだけではなく、文章作品を作る側のことを学んで、そこで交流を広げました。

そのうち、自分の書いた作品を朗読してくれる方が出てきたり、知り合った方の中で、演技が得意な方にお声をかけて、一緒にボイスドラマを作るようになりました。

私の場合は、そういう仲間と協力して作っていけるようになりました。

 

依頼するに当たって、本当に失礼がないか、凄く考えます。ネット上の他人に声をかけるのですから、胃が痛くなることもあります。

ある理由が無かったら、こんなことを始めなかったと思います。これについては、最後に書きます。

 

 ◆2-2.【演者】・【編集】・【演出】・【広報】などの交渉と分担

 

前にも書きましたが、人には得意、不得意というものがあって、全て一人でできるものではありません。それで、話し合いながら、得意分野を分担します。

でも、そのためには、誰がどんなことを得意としているのか。それを知る必要があります。

私は、編集や演出、広報などを他人に依頼した経験が無いので、演者の配役について、どう人と交渉したかについて述べます。

 

●2-2-1.得意分野を知り、役割を考え依頼する

 

「作ることや演じることが好きな人のコミュニティ」の項目でも書きましたが、いろいろな方の配信を聞きに行きます。そうすると、この方は、編集やスケジュール管理がうまい方なんだなとか、演じることが大好きなんだなとか、書くことが好きなんだなとか、このジャンルの話が好きなんだなとか、いろいろなことがわかってきます。

それで、いろいろ考えながら、連絡を取ります。

ただ、大事なことは、得意分野であるかどうかだけでなく、その方にお願いしたとき、その内容が、楽しんでいただけるものだろうか、ということを凄く考えます。

 

配役に関しては、その方の普段の配信の内容や声の調子、お人柄、配信のタイプ……不定期更新か、定期更新か、穏やかな内容か、かなり、独特な内容かなどを見ます。

 

その上で、三つの条件が合ったら、お願いします。

 

・考えているイメージや雰囲気に合っている方

・演じる事を楽しんでいただけそうな方

・お願いする役が、その方の核みたいな所から、あまり離れていない

 

「自分の考えているイメージと合っている」というのは、わかりやすいと思うのですが「演じる事を楽しんでいただけそうな方」というのはわかりにくいかもしれません。

 

本人の好みの問題や、一緒にやることへの抵抗がありそうか、ということが問題になります。

配信を聞いていると、あるいは、Twitterなどのつぶやきを見ていると「今、体調が悪い」とか「仕事で死ぬほど忙しい」

「育児が大変」などと、おっしゃっていたり、書いたりしている場合があります。そういうタイミングでお願いするのは、ちょっと難しいですよね。

配信を何度も聞いていると、その方の個性がわかります。劇やドラマというよりは、歌や音楽、モノマネが好きだったり、先ほど述べたようにあくまで一人でやるのが好きな人の場合があります。あるいは、相手がいるものはプレッシャーがかかるので、誰かと一緒にやるのは苦手という方もいます。

演じることがお好きそうでも、ご本人のやりたい作品や嗜好が、私がやりたいことと、かなりかけ離れていそうだなと感じる場合もあります。そういう方は、声をかけません。

 

「ご本人の核と離れていないか」というのも説明しにくいのですが、配信を聞いていると、ご本人の気性や個性がわかってきます。

そのもともとの個性で、チャキチャキした感じの方に、ゆったりとした演技をお願いしたり、逆にゆったりとした方にチャキチャキした演技をお願いしたりは、基本的にはしません。
それから、サンプルボイスという短い台詞を投稿されている方もいます。それは、大概、その方が好きで得意とされるキャラや言い回しです。そういうものを参考にします。

演じることが好きな方は、無茶ぶりしても、演じてくださることもありますが、私は、あまり、そういう頼み方はしないです。

ご本人の個性とは違う気がするけど、ご本人が、配信の中で、こんな役をやってみたいとおっしゃっている場合があります。例えば、悪役をやったことがない方が、悪役をやってみたいと配信で言われている場合。それで、聞いていて、できそうな方だなと思ったらお願いすることもあります。

 

※持ち合わせに無い感覚を短期間に習得する演者さん

 

これは、物凄くびっくりした経験でした。

一回、かなり、ご本人の核と離れたようなキャラをお願いしてしまって、どうしようかと考え込んだことがあります。

具体的には、ある障害があるキャラの役でした。

でも、その方は、勉強したいから、いろいろきちんと言って欲しい、リテイク(再収録)が多くなってしまうかもしれないけれど、と言われて、どんなキャラなのか、その障害は、どういう仕組みで、どういうふうに困ることが起きるのか、事細かく説明したことがあります。

無償でお願いしているので、本当に、こんなご負担をかけていいんだろうか、と思って、ドキドキしていました。

そうしたら、研究と練習を重ねられて、びっくりするくらいそのキャラ理解をされて演じられ、変な表現ですが「人間って凄い」と思いました。正確な表現は、「その演者さんが凄い」、かもしれませんが。

演技の幅が広がったと、お礼を言われたのですが、心の中で拝みながら、収録ファイルを拝受しました。

 

演者さんも、無償で出演していただける方もいるし、有償でなくては、出ないという方もいて、まちまちです。

私は、お金がないので、無償で引き受けて頂き、貴重な時間を分けて頂いているので、言葉にできないくらいの気持ちになることがあります。

 

『アルジャーノンに花束を』という小説の中の一節で、

 

「時間や愛情を分け与える人は数少ないのです」

 

という言葉がありますが、本当に尊いです。

 

幸いなことに、私は親切で人間的に素晴らしい方たちと多く知り合えたので、作品ができています。

 

 ◆2-3.方針の確認・すり合わせ

 

引き受けてくださったら、どういう内容をどういうふうにやっていただきたいか、確認するためのやり取りをします。

これも、具体的なことが無いとわかりにくいと思うので、私の場合、どうやっているかを書きます。

 

私は、自分で書いた台本をお願いする場合が多いのですが、こんな感じになります。

 

●2-3-1.言葉としての読み方・イントネーション

 

台本を送って、「わかりにくい内容や読みにくい内容がないか」をお聞きします。

例えば、

「生命」

という言葉は「せいめい」と読むのか「いのち」と読むのか。

など、複数の読み方がありうる言葉をどの読み方にするのか、確認のやり取りをします。

あるいは、複数のアクセントやイントネーションが考えられる言葉について、確認しあいます。

例えば、外国人の名前などが出てきた場合、私は「ガラーホワ」という外国人のキャラを出したことがあるのですが、演者の方に、

「ラ」にアクセントがあるのか、「ワ」にアクセントがあるのか、と聞かれて、それに、お答えしたことがあります。

あと、この方は、西日本のイントネーションだなとか、東北のイントネーションがちょっとあるなとか、考えながら聞いています。

どうしても物語の内容と齟齬がある場合は、リテイク(再収録)をお願いする場合がありますが、イントネーションやアクセントなかなか難しい問題です。

イントネーションを直すことに必死になると、演技の方に気が回らなくなるので。
ある有名な役者の方が、ネイティブじゃない方言に一生懸命になり過ぎると、演技ができなくなるので、方言の正確な再現はある程度犠牲にする、と言っておられた方がいました。

あるドラマでも(これも、誰もが知っているような有名な方が出てたのですが)出身地の方が「かなり変」と言っていました。
多の地域のなまりを入れるのも、自分の地域のなまりを抜くのも大変なことですね……

 

●2-3-2.キャラクター・感情・雰囲気を伝える

 

台本書きと、演出は別の人が担当することもあります。舞台演劇の場合は、台本の担当、演出の担当は、きちんと分業した方が、偏りが起こらないという考え方もあるそうです。いろいろな考え方があると思いますが。

しかし、私は、台本も演出も一緒にやってしまって、別々にやったことが無いので、演出の話も一緒にしていきます。

 

演出のやり方も我流なので、そこはご承知おきください。

 

お願いしたキャラの性別や年齢、性格などをお伝えして、演じていただくのですが「もっと細かく状況を設定されていますか? それとも、こちらで自由に作っていいですか?」と言われたことがあったので、もっと細かくお伝えしたことがあります。

 

例えば、

 

例えば、自分で書いたシナリオでこんなことがありました。

戦国時代が舞台で、戦死してしまう守備隊長の役を担当していただいた方なのですが、どういう人物で状況かということを尋ねられました。

それで、こんなふうに詳しくお答えしました。

 

実戦経験も豊富で、人望もある人物。30代~40代くらいの男性。

 

「いつの間にか城内に敵が侵入してきていて、部下を率いて応戦したが蹴散らされてしまい、退却して、主君の屋敷に通じる狭まった道を塞いで、奮戦している。しかし、他の味方とも、連絡が取れず、部下も浮足だっていて今にも、破られそう」そんなような意味のことを伝えました。

 

それから、こんなこともありました。

奮戦している兵士の方が、なんか違和感があったので、自分でも何が違うのか考えて、

「すみません。古代の甲冑って、重さが20kgあって、剣も1kg近くあったと思われます。なので、そんな状態で長時間戦っている所をイメージしてください。息が乱れると思います。それから、敵に囲まれていて、奮戦しているとしたら、剣で敵の攻撃受けて、それを力づくで跳ね返し続けて、何とかしのいでいる感じもイメージしてください」と注文したことがあります。

 

言葉にできないで、「何かが違う」とうっかり言ってしまって、演者さんを不安にさせてしまったこともあります。そうなると、「やれる自信が無いです。ほかの方にお願いしても大丈夫ですよ」というようなことになる場合があります。そういうときは、プレッシャーをかけてしまって、本当に申し訳無いと思います。具体的にわかるイメージを伝えることがとても大事だと思っています。

 

※作者よりキャラを深く理解する演者さんがいる

 

これは、シナリオ書いてボイスドラマを作らなければ、想像もしなかったのですが、「作者よりもキャラを深く理解する」演者さんがいます。

「語尾や言い回し、少し変えてもいいですか?」と言われる演者さんがいます。私も気をつけるようにはしているのですが、私が書いたものが、目で読んで、意味はわかるけれど、話し言葉としては言いにくい言い回しになっている時があるのです。

そういう時、私は基本的に「意味やニュアンスが変わらなければ、言いやすい言い方に変えて大丈夫です」と、お答えしています。

しかし、演者さんが、直してくださった言い回しの方が、「滑らかに言いやすい言葉になった」だけではなくて「作者が考えた台詞よりも、本当にそのキャラが言いそうな言い回し」になっていることが、あります。

これは、びっくりします。演者さんの方が、作者よりも、キャラを理解しているということがよくあるのです。

キャラとしての言い回しの感度の鋭さは、やっぱり専門にやっている演者さんは、物凄いです。

それで、よく演者さんに「その台詞は、私が考えた台詞よりも、キャラにぴったりなので、その台詞で台本に記録してもいいですか?」と許可を頂いて、書き直すことは多いです。

だから、微妙な言い回しは、私だけでなく、演者さんの言葉を頂いて、一緒に作っています。

 

※ボイスコという言葉

 

ボイスコというのは、ボイスコーポレーターの略です。最初聞いたときに、私はよくわかりませんでした。

ネット声優という言い方もあります。

声優と何が違うのかというと、言葉の上で「プロの声優さんとネットで趣味でやっている人が同じ名称では、失礼ではないか」という議論があったのだそうで、そこから生まれた言葉のようです。

どういうふうに区別しているのか、私には、厳密にはわかりません。

「プロとして、がんがんやっているわけではない?」ということなのかどうか。どういう意味合いなのか、人によって、受け取り方が様々なのです。

無償でやっている方もいたり、有償でやっている方もいたり。有償・無償、両方やっている方がいたり。でも、どちらにおいても、熱心な方が多いので、どうお呼びしたらいいのか、困ることがあります。

用語の解説のサイトを読んでいると、いろいろな立場の方が、いろんな考え方で、名乗っているということでした。解釈が人それぞれで、一言では説明できないと感じた言葉です。

人によって、考え方が様々ということは、難しい言葉だと感じているので、私は「~役を演じて頂いている方」とか「演じ手さん」、「演者さん」「出演者」という言い方をしています。

第1回 作品を見つける方針を決める
第3回 編集
第4回 配信・広報
第5回 終わりに

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