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「この生活いつまで続けられるか…」子どもの生活に必須のアレルギーミルクが自費で月8万円。公的支援も相談先もなく経済的不安と闘う日々。/千葉県佐倉市在住・山本さんへのインタビュー

こんにちは、医療的ケア児の親で、フリーライターのおざわです。
医療的ケア児の親御さんにインタビューをし、それぞれの生活や困りごと、各自治体の課題などをお聞きして記事にしていく企画を始めました。
(詳細はこちらの記事にまとめています。)

今回お話をお聞きしたのは、千葉県佐倉市に住む山本さん(仮名)です。

山本さんは今、切実に抱えている問題があります。

子どもが今生きるために必要なアレルギーミルク代が全て自費で、月8万円も出費が増えてしまったことです。

しかも、それに対しての公的な支援はありません。

「月8万円の出費増」
こうして言葉にするのは簡単ですが、自分の家庭に置き換えて考えてみると、容易に対応できる問題ではないことが想像できますよね。

どうしてこんな事態になったのか、公的支援がない、全て自分で賄うしかないというのはどういうことなのか、詳しくお聞きしました。

12歳で新たに発症した消化管アレルギー。それに対応するためのミルクは健康保険対象外だった。

山本さんの息子さんは、今13歳。

染色体異常がある、重症心身障害児です。
医療的ケアとして、人工呼吸器と胃ろうがあります。

以前はペースト食を口から食べることができていて、胃ろうからは足りない量を補う形でペースト食やエレンタールPという栄養剤を注入していました。

ところが、4年ほど前からペースト食を注入すると嘔吐するようになってしまい、そこから事態が変わっていったそうです。

山本さん「ペースト食を注入すると吐く、という風になって、医師に相談すると、ペースト食が何かアレルギーなのかな、っていう話になりました。それでペースト食をやめたんです。でも栄養剤だけにしても吐くことが多くなって。『癒着性イレウス(※1)かな』とも言われました。この子、0歳の時に腸の手術をしていたので。あまりにも嘔吐が多くて、入退院も繰り返すようになったので去年、12歳の時、内視鏡検査をしてみたら、『好酸球性胃腸炎(※2)の疑い』だと言われました。」

※1癒着性イレウスとは?

癒着や索状物によって腸管が折れ曲がったり狭くなったりして、消化管の内容物が流れなくなる状態。過去に、腹部の手術歴がある方、腹部外傷の経験がある方、胃潰瘍穿孔(いかいようせんこう/胃潰瘍によって胃に穴があくこと)などで腹膜炎を起こされた方などは、「癒着性イレウス」を発症する可能性があります。

引用元:社会福祉法人 恩賜財団 済生会「イレウス(腸閉塞)はこんな病気」
URL:https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/ileus/

※2好酸球性胃腸炎とは?

消化管に炎症(ただれ)が起きて様々な症状を引き起こす病気で、いずれの世代でも発症する可能性があります。(中略)消化管内視鏡検査を行って、小さい組織を採取し、顕微鏡で見て、好酸球という細胞が胃、小腸、大腸などに集積しているときに診断されます。

引用元:国立研究開発法人 国立成育医療研究センター「好酸球性胃腸炎について」URL:https://www.ncchd.go.jp/center/activity/egid/patient/ege.html#:~:text=%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E5%88%B6%E5%BA%A6-,%E5%A5%BD%E9%85%B8%E7%90%83%E6%80%A7%E8%83%83%E8%85%B8%E7%82%8E%E3%81%A8%E3%81%AF,%E3%81%8C%E8%B5%B7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%82%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

山本さん「つまり、何かの食物に消化管がアレルギー反応を起こして、それで嘔吐につながってるんじゃないか、っていうことです。うちの子は他にも食物アレルギーがあったので、ただでさえ摂れるものが限られていたんですが、エレンタールPでも消化管にアレルギー反応が出る疑い、となると、もう処方で対応できる栄養剤がないそうなんです。ペースト食もダメ、栄養剤でもダメ、となると残る選択肢は、乳幼児用のアレルギーミルク『エレメンタルフォーミュラ』だけと言われました。ただこのミルクは、カテゴリとしては『食品』なので、処方には対応してないし、全て自費で購入しないといけません。しかもこれは乳幼児用のミルクなので、13歳の子どもの栄養を賄うには、1日分でそれなりの量が必要です。いざその生活が始まってみると、1日の必要量でだいたい費用が3,000円弱かかることがわかりました。ひと月分にすると、8万円近くになってしまいます。」

突然の出費増、貯蓄を切り崩して賄うも、先が見えず。支援を探したが…

子どもが生きるために、現時点では欠かすことのできないミルクが、8万円。子どものためならそうせざるを得ないとはいえ、ひと月の出費が8万円増えることは、相当な負担です。何か使える支援はないのでしょうか。

山本さん「何か支援がないのかと思い、市役所、保健所、医療的ケア児支援センターはもちろん、相談支援専門員やソーシャルワーカーなど、思いつく限りのところに相談をしました。でも、結果としてみなさん『お役に立てることはありません』で終わり。唯一、民間の支援団体が救いの手を差し伸べてくださって、数日分のミルクを支援でいただくことができる月もあります。いつまで支援していただけるのかはわかりませんし、毎月の支援が確定されているわけでもないので、そこに頼り切りになるわけにはいかないのですが、支援してくださるだけで本当にありがたいので、そこは仕方ありません。でも、この団体さんが最大量を支援してくださったとしても、月に5万円は必ずかかるんです。ですからこの問題を根本的に解決するには、やっぱり公的な支援が必要だと思っています。息子は重心児で医療的ケア児ですから、支援のことで困ったことは今までもそれなりにあるんですが、ここまで何も公的支援がなかったことは初めてで、途方に暮れています。せめて税金の控除だけでも受けられないかと思い税務署にも相談しましたが、『医療費』ではなく『食費』になる以上、それも受けられないそうです。分類的には食費かもしれないけど、代わりがきかない生活必需品なのに、高額で、何も支援がなくて、いつまでこの生活続けていけるだろうって、本当に不安です。子どもの医療的ケアがあるということもあり、現在子どもが通う支援学校に付き添いもしている状態で、私が働くこともできません。今はまだ貯蓄を切り崩してミルク代を賄えていますが、これがいつまで続くかわからず、長期的に毎月8万円かかるとなると、どうなってしまうのか…。」

アレルギーミルクを勧めた医師にも相談をしたそうですが、具体的な対策は見つかっていません。

「『どうしてもこの生活を続けるのが難しければ、施設に入れるという選択肢もあるよ』と医師には言われました。でも、ずっと一緒に暮らしてきて、これからもそうしていくと思っていたのに、経済的な理由だけで施設に入れるということに、どうしても踏み切れません。だからなんとか頑張りたいけど、現実問題、すごく厳しいです。節約できるところはしていますが、呼吸器があるから電気代もかかるし…、真面目に、他の家族はもやしだけで生活していく?とかも考えちゃいますよね。それでもミルク代には足りないんですが…」

何か救済が欲しい。制度をもっと柔軟にしてほしい。

山本さんは、できる限りの努力をした上で、それでも助けが必要で、助けを得るために思いついたことは全てしてきました。でも今のところ、支援につながる方法は全く見えていません。

山本さん「しらみつぶしに調べていたら、代謝性疾患については、特殊ミルクの支援が受けられる制度があるということを見つけました。でも、好酸球性胃腸炎は該当しないとのことです。小児慢性疾患などで、食事の補助に該当するものがないかどうかも保健所で調べてもらいしたが、ありませんでした。調べて、藁をもすがる思いで問い合わせして、該当するものがない、と断られる、って結構しんどいです…向こうは「役に立てることはありません」の一言で終わりでも、こちらはその後も生活していかないといけない。向き合わないといけないんです。せめて、他の糸口になりそうなものを一緒に考えてくれるとか、誰かが伴走してくれるとか、そういうことがないと、行っては切られ、行っては切られ、というのを繰り返して、もう誰に相談するのも怖くなってきてしまいました。市や県レベルで解決できる話ではなく、国になんとかしてもらうような事案じゃないかとも思っているので、気軽に議員さんに声をかけられるものでもなさそうです。今こんなに困ってるのに、これ以上どこに相談したらいいか全くわからないんです。」

山本さんは最後にこう訴えます。

「今までの困りごとは支援を使ってなんとか乗り切ってきましたが、今回はもう八方塞がりです。うちは今ミルク代に困っていますが、違うジャンルでも、支援制度の狭間に落ちてしまっている家族がいるんじゃないでしょうか。助かる命が増えて、いろんな病気や障害の子がいる中で、元々ある制度の枠から外れる障害や疾患の子がこれから増えていくんじゃないかと思います。これじゃないとダメ、というような制度じゃなくて、こういうことに該当したら支援する、というように制度自体融通が利くようなものにしていかないと、支援からこぼれていってしまう家族が増えてしまうような気がします。こういう状態をわかってもらうためにも、声を届けたい、と思っています。」

あとがき

子どもが生きていくために絶対に必要なミルク。それが高額でも、家族の生活を圧迫しても、「自助」でやっていくしかないというこの状況に、とてもやるせない思いでいっぱいになりました。

あれ?日本って「健康で文化的な最低限度の生活」が保障されているんじゃなかったっけ…?その最低限度の生活には子どもの成長に必要な栄養をとることって、入ってないのかな。特に贅沢をしているわけでもない、ただ必要だから買っているのに、それが家族の生活を脅かしている。これってなんとかならないの…?

誰かに、この問題を認識して、「何とかしよう」と言ってもらいたい。
山本さんのこの声が、この国の誰かに届いてほしい。

そんな思いでこの記事を書きました。

全ての子どもが、成長していくための不安がない国でありますように。

最後までお読みくださったあなたへ

※【12/7追記】こちらは12/6をもって終了し、いただいた金額は山本さんにお渡ししました。ご協力ありがとうございました!

最後までお読みくださって、ありがとうございます。

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今回お伝えしたように、今山本さんは毎月、ミルク代に悩んでいる状況で、国や自治体からの支援はありません。なので、このnoteの収益だけでもお渡ししたい!

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