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【臨床生理・病理】「がん」ってなんなの?⑥ 〜「がん」にだって言い分はある〜

どもです!ねこのてです!

さぁて、シリーズ6回目となりました。これまでの知識を総動員して、がんの特徴にどんどん切り込んでいきましょう!

 がんは、「セントラルドグマのエラーによって生み出された異常な細胞たち。」
「同じ体内で生まれた細胞」なんです。がんは、自分がこんなに悪く思われているなんて知らない。「はたらく細胞」から拝借した画像を出しますが、がんからしてみれば、きっとこんな感じ。

だから、細胞として生まれたからには、生存するためにあらゆる手段を尽くそうとします。でも、私たちの体だって黙ってない。免疫システムが、毎日作られるがん細胞を破壊してくれているのです。
これら、「体の免疫」と、「がんがなんとしても生きようとする手段」を今日は記事にします。

免疫を担当する細胞たち

 私たちの体の中には、いつ外敵が侵入してもやっつけられるように、「免疫」と言う機構が備わっています。「白血球」とかがそうです。この白血球は、実は種類があって、「好中球」や「リンパ球」、「単球」といったものに分かれます。そしてリンパ球は、「T型」「B型」に分けられ、「T型」はさらに「キラーT」と「ヘルパーT」に分けられます。
あとは、「マクロファージ」とか「樹状細胞」など、ほんと色々います。

免疫をつかさどる細胞はたくさんいるけど、それぞれ役割が違うんです!

 さてこっからはその役割を頭でイメージ!!刑事ドラマでよくある「情報を集めて作戦を立てる本部のインテリ組」とか、「現場にいる刑事」とか、「通報があって真っ先に駆けつける警察官」とか、そんなイメージをもって読んで下さい。
どうやら、犯人は集団で悪さをしてるようです!!

【イメージその①】
 好中球T細胞「警察官の役割」。真っ先に犯人集団に戦いを挑みます。その中でもT細胞はキラーTとヘルパーTに分けられますが、キラーTは「俺がいく!!!」ってやつら。ヘルパーTは「お前らいけ!!!!!」ってやつら。前線です。これ以上被害が出ないように頑張ってくれる。

【イメージその②】
マクロファージも敵を倒してくれますが、倒した後に犯人のポケットや持ち物をガサゴソ調べて、犯人はどんな奴らなのか、前科はあるかとかを調べます。そして、犯人の詳細を突き止めると、「樹状細胞」とその詳細について連携をとります。
この二つの細胞のおかげで、みんなに犯人の詳細が知らされます。犯人の詳細がわかったら、他の免疫細胞に教えてあげるんですね。「刑事」とか「ちょっと現場に出る本部のインテリ組的な」イメージ。

【イメージその③】
犯人の詳細がわかったら怖いものないわけです。
その後「B細胞」とか「T細胞」もさらに活性化されて、広範囲に「うおりゃあああああ!!!!くらえええええ!!!」ってなるわけ。

こういう流れが同時進行で起こっているんです。

 はいっ!これが有名どころの免疫反応ですかね。私の覚え方なので、かなり大雑把ですが、こんな感じ。


 さて、がん細胞は、エラーによって一日に数千個も出来ていると言われています。
がんが私たちの体にとって悪影響を及ぼす前に、これらの免疫システムががんをやっつけてくれているんですが、、一つ「問題」が。がんはもともと同じ細胞から出来た仲間。そのせいなのか、免疫システムも本気でボコボコに出来ないんです。「あれ、こいつら仲間か?」って心で思いながら攻撃してる。だから免疫システムをすり抜けるがん細胞が出てくるんです・・・。

がんが生きのびるための手段

 免疫システムをすり抜けたがん細胞。これからどうやって生き延びようとするでしょう。まず、栄養をどこかからもらわないといけません。そして、同じがん細胞の仲間は多い方が良いと判断する。要は、勢力を拡大しようとするんです。

見ていきましょう。

 栄養をもらうために手っ取り早いのは、血管を奪うこと。血管を介して、酸素や栄養が運ばれますからね。なので、がんはもともとあった組織のキレイな構造を破壊(浸潤)して、血管を引きつれます。自らも血管を作る指令を出したりします。
 そして、周囲の構造を破壊しながら自分達の足場を着々と固めていきます。がんが増殖した組織は繊維化を起こし、固くなってしまうんですね。
 そうやってがんがどんどん進行してしまうと、栄養はがん細胞に取られてしまって、私たちの体は痩せて衰弱していきます。この状態を「悪液質(カヘキシー)」と呼びます。

 さらにがんは勢力を拡大しようと考えます。
「利用できるのは、何だ・・?」
「・・・!!!。周囲を壊して、引っ張ってきた血管やリンパ管があるじゃんか」
となるわけです。

 そう、がんはこれらの構造をたくさん利用して、体のあちこちに勢力を拡大しようとします。これが「転移」です。
そして、がんは色んな物質を体にばら撒いて、転移がバレずにこっそり成功するようにしたりします。体を騙すことも覚えているんです。


がんの特徴

こうやってみると、がん細胞が正常細胞と比較していかに異常な機能を持つものかわかりますね。

以下にまとめます。

【がん細胞の特徴】

①アポトーシスせず、死なない(不死)
②異常な細胞構造・機能を持つ(異形成、分化異常)
③増殖が止まらない(自律性増殖)
④浸潤、転移する能力を有する
⑤悪液質


となります。

 これらが「がん」の有する特徴ですかね。セントラルドグマのエラーが幾重にも重なって、このような機能を持つ細胞が生まれてしまうのです。「生きてる」からこそ起こってしまう病気です。

 ただ、過度なタバコや飲酒、生活習慣を改善することで細胞に与えるストレスを減らせます。病院で、あれダメこれダメが通説になっている理由の一つがこれです。

 娯楽や嗜好をなくすと、そこに「人間らしさ」はありませんが、
私たちが知らず知らずに与えている細胞へのストレスが過度なものになると、「がん」を産んでしまうことも多いのかもしれません・・・。

 ・・・おぅ。なんかしんみりしちゃいました〜。

 本日の記事はここで終わりになります!読んでいただいた方、本当にありがとうございます。
もう少しで「がん」シリーズの記事も終わりになりますが、次回は、良性腫瘍との違いを中心とした記事にします!!


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がん関連のわかりやすい本です。まいど、「はたらく細胞」も!

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