放課後の魚
放課後の教室が好きだった。
人の気配がしなくなった教室の窓から差し込む日暮れが好きだった。
普段は話すことのない、教室に残った気になるあの子に話しかける。そのドキドキが好きだった。
昼間は人でごった返していた学校が放課後の鐘が鳴ると姿を変える。その変化をみるのが好きだった。
その変化はまるで潮の満ち引きのように感じた。
放課後は僕にとっての海だった。
穏やかで優しいそんな海だった。
どこまでも泳いでいけるそんな気がした。
もうあの甘美な日々は戻ってこない。
海を眺めると懐かしく、切なくなるのは魚だった頃の名残り。
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