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素面と創作

ゆうべ呑みながら創作について書きました。一夜明け、今日は素面で創作に対するいまの思いを書いてみます。

呑み書きにりんこさんがフライングで書いてたこの記事。

公募に出すようになって、売れる小説とは何か? を考えるようになったとおっしゃるのですが、まさに私も同じようなことをこの頃思うようになりまして、共感しまくりました。

まず「初速」。Z世代はドラマやアニメを倍速で見ると噂に聞いたときは私もおののきましたが、まあそのぐらい「待てない」のですよね。遠景に夕陽が沈む海の上に、一艘の船が黒い影となってゆっくりと進んでいくシーンで始まる映画のDVDなんかは、有無をいわせず早送りです。人物が大写しになってセリフを言う場面が早く見たい。早く物語を始めてほしい。

次に「世相」。いまの世の中の流れといいますか、いまの時代に即した何か。身近な材料が小説の中に入っていると、読者の共感を得やすいですよね。例えば、進撃の巨人から鬼滅の刃、呪術廻戦へと続く流れには、人体を喰う、血みどろになって戦うという共通項があるように。

最後に「斬新さ」。あっと驚く仕掛けです。人は感情を大きく揺さぶられた出来事をいつまでも覚えているから、「なにこれ、めっちゃおもしろい!」「めっちゃ怖い!」「めっちゃ笑える!」と多くの人に思ってもらえたら、SNSであっという間に拡散されます。

この「初速、世相、斬新さ」の3つを兼ね備えた小説が売れる。すなわち出版社が求めている。つまり文学賞を受賞する確率が高いのではないかという分析です。私がしたのではなく、りんこさんの分析です。りんこさんのふんどしで相撲とってすみません。でもほんと、同じことを私も考えていたのですよ。ていうか、たぶんデビューを目指してる人ならみんな似たような分析はやってると思う。それをりんこさんがわかりやすく書き並べてくれたのです。りんこさん、ありがとう。

もっとわかりやすい具体例や、もっと深い考察も惜しみなく書いてくれているので、目指しているみんな、りんこさんのnote読んでね。もっかい貼っておきます。


小説家を目指すという関連で、最近青空文庫で読んだ菊池寛のエッセイ「小説家たらんとする青年に与う」も紹介しますね。

書かれていることをざっくりまとめるとこうです。小説家として立ちたいと思うなら、小手先だけの技巧に満ちた短編を書くなどの遊戯はやめて、先人の本をたくさん読み、自分の人生をまず生きよ。人生観が確立されればおのずと物語が生まれる。書き方やなんかも自然と浮かび、苦もなく仕上げることができるものだ。

本当に作家となる人は、くだらない短篇なんか書かずに、専ら生活に没頭して、将来、作家として立つための材料を、蒐集すべきである。
かくの如く、生活して行き、而して、人間として、生きて行くということ、それが、すなわち、小説を書くための修業として第一だと思う。

「小説家たらんとする青年に与う」/菊池寛

1923年に書かれたエッセイなので、いまから約100年も前のものですが、小説を書く上での基本的姿勢を説く、本質をついた話だと思います。実際に菊池寛も、アイデアの収集に3、4ヶ月を費やし、執筆には数日あればよいという書き方だったそうです。すげえな。きっと小説を読んでくれという見知らぬ青年からの依頼に辟易していたに違いない。

僕は先ず、「二十五歳未満の者、小説を書くべからず」という規則を拵こしらえたい。全く、十七、十八乃至ないし二十歳で、小説を書いたって、しようがないと思う。

同上。

身も蓋もない。


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