やたら自己肯定感の高いブスはなぜ生まれるのか？

これは『ブス』に対する悪口はなく単純かつ真剣な疑問なので、とりあえず読んでいただきたい（どうでもいいですけどフリー素材の画像の女性はとてもかわいいですね）。

私はいわゆる『卑屈なブス』で、暗黒の学生時代送ってきた。クラスではカースト上位のギャルグループにマウントされ馬鹿にされる地味グループだったし、もちろん男子からも「アイツはねーよ」と言われる『アイツはねーよ枠』に入っていたために彼氏もできなかった。特に小学校高学年から中高は私にとって地獄そのもので、この期間に私の自尊心はどんどん削がれていった。

話は逸れるが、（もちろん全員ではないにせよ）女の子はなんだかんだプリンセス系のピンクやらリボンやらフリフリやらレースやらの要素が好きな子が多い。そして例に漏れず私もその一人だった。もし今から色白華奢な美少女女子中学生になれたらツインテールにリズリサとかアンクルージュとかの服を合わせたいくらいである。そしてその願望は幼稚園児の頃から持っていたのだが、私にはそういった格好をすることは許されなかった。女子特有の同調圧力があったからである。

女の子はフリフリの格好を心の奥底で望んでいながら、不思議なことに口ではダサいと見下していることが多い。そして更に言うなら、「こういう格好はダサいけど、本当にかわいい子（芸能人で言うなら橋本環奈ちゃんとか）なら許されるよね」という意識が、口に出さずとも全女子の間で暗黙の了解的に共有されていたものである。

よく女は美人に嫉妬すると言うが、あれは正直嘘だと思う。女は『本当にかわいい女』には甘いし、逆に言うと『調子に乗っているブス（もしくはブスという身分を弁えていないブス）』にめちゃくちゃ厳しいのだ。私も何度かブスがやってはいけない行動の数々（ぶりっこ、ツインテール、フリフリでうさぎ柄のワンピースを着る等）をした結果あらゆる手で完膚なきまでに叩き潰され、高校生の頃にはすっかり『ブスとしての身分を弁えたブス』として成長していた。

さて、そんな卑屈で身分を弁えていて好きな服を着たりかわいい振る舞いをすることを抑圧していた私に転機が訪れたのは、大学に入ってからである。学部は違ったが、サークルで（非常に失礼な言い方になるが）『ブスという身分を弁えていないブス』と出会ったのが始まりだった。

その子は私と同等の不美人だった。そして顔はほぼすっぴんで、艶のない黒髪ロングで、春なのに分厚い黒タイツで、フリフリの服を着ていた。彼女に初めて出会った時の私の驚愕ぶりといったら、今でも筆舌に尽くしがたい思い出である。

更に話が逸れるが、女は『化粧っ気がなくてダサくてもっさりしてるのに自分のことをかわいいと思ってそうな女』を親の仇のように嫌うことが多々ある。例をあげるならにゃ●こスターのア●ゴラ村長のような女性である。彼女は一時期ネット民の一部から、非国民のような叩かれ方をされていた。私自身はアン●ラ村長のことは割とマジでかわいいと思ってるが、それはともかく大学で出会った彼女はア●ゴラ村長の上をいっていた。アン●ラ村長だって、あんなフリフリはおそらく着ないだろう。

話を戻すが、とにかく大学で出会った彼女をスゲー女だと思うと同時に、「そういや、女同士の同調圧力とかを全く気にしない女っているよなぁ」という気持ちになった。こういう個体は非常に稀で、私のようなキョロ充の凡人にとってはなにより羨ましい存在だったのは言うまでもない。私のような人間には、「人は人、わたしはわたし」がもっとも難しい行動だった。

彼女に対する逸話は他にもある。なんと彼女はコスプレイヤーだったのだ。しかも美少女キャラ専門の、である。私はショックだった。前述した通り私はフリフリに憧れている女だったから、少なからずコスプレにも興味があった。二次元の美少女キャラはかわいい。私もピンクとか水色とか銀髪のウィッグを被って魔法少女みたいな衣装を着たい。それでかわいいポーズを撮って写真を撮られたい。でもやらない。ブスだから。私は中学生からまとめサイト等にハマっていて、不美人のコスプレ画像がどのような扱いをされるのかわかっていた。そしてなにより、ブスな自分の顔のせいで二次元美少女キャラを汚してしまうのが嫌だった。しかし彼女は自分の容姿などお構いなしにコスプレを続けた。メイクは普段と同じくほぼすっぴんで、カラコンすら入れてなかった。

他にも彼女は猫撫で声で話しながらかわいい仕草をしたり、髪型をツインテールにしたり、ニーソを履いてきたり、ピンクで苺柄のワンピースを着たりと好きなことを満喫していた。そしてそういった日常が続くにつれまったく理不尽なことに、私は日に日に彼女に対して憎悪にも似た嫉妬を募らせていった。

嫉妬などどれも一様に醜いが、私の場合は特に醜かったと思う。別に彼女はなにもしていない。ただ自分の好きなことをしていただけである。私みたいな顔もブスなら性格もブスの女に出会いさえしなければ、こんなところでこんな文章を書かれずに済んだのだから被害者は間違いなく彼女だ。しかし当時の彼女に対する私の本音はこうだった。

「なんで私は我慢して好きな服を着るのをやめたりわざと低い声を出したり飲み会で笑いを取ったりしてるのに、ブスのオメーは自分の好きなことをやってンだよ」

は？　別に彼女はなんも悪くないじゃん。ていうかおまえが勝手にそういう行動を選んでるだけじゃん。そんなに彼女が羨ましいなら同じことをすりゃーいいじゃん。

はい、このような突っ込みは誠にその通りでございます。まったく返す言葉もございません。

ただ、当時の私には小学生から高校生にかけての様々な呪縛の言葉に縛られて、そこから逃れようとしても逃れられなかった。

彼女と同じような服を着ること自体はできる。ただ、着ていても心のどこかに違和感が生じて、心の中にいるもう一人の自分が「似合わないよ、ブス」と責め立ててくるのだ。

おそらく当時の（というか今も）私は自己肯定感が恐ろしく低かったのだと思う。そして反面彼女は、服装や髪型のこと以外から見ても自己肯定感が高かった。自分というものを確立し、「人は人、わたしはわたし」を実行できていた。だからこそこんなにも彼女に憧れて嫉妬したのだと思う。

ただ一つ疑問はある。それは彼女が成長する過程（特に小学校高学年から高校生）にかけて、『叩き潰されること』はなかったのか、ということだ。さすがにこんな失礼なことは面と向かって聞くことはできないが、運良くそういった経験自体がなかったのか、それともそんな経験があったにも関わらず強く生きてきたのか、私にはわからない。

そんなわけで、タイトルに戻る。過激なタイトルになってしまったが、私のような『卑屈なブス』の正反対にいる『自己肯定感の高いブス』の皆さんがどのような過程でそうなったのか知りたい。