感電 米津玄師
映画「ラストマイル」の興奮冷めやらぬ中でこれを書いている。
推したいところは沢山あるが、物流の末端で汗を流す人々に焦点が当たっているのがシビれた。
TVドラマ「アンナチュラル」でも、蜂蜜ケーキ製造工場責任者の回が最も好きだった。
野木亜紀子の脚本からは、末端で職務を全うしようと奮闘する人への暖かい眼差しと、それに応えようとしない社会への怒りを感じる。
そして、それがエンタテインメントとして見事に昇華しているところがひとつの美点と思う。
先ずは見るべし「ラストマイル」である。
というわけで今回は米津玄師の「感電」を採りあげる。
野木亜紀子脚本の傑作TVドラマ「MIU404」の主題歌である。
「MIU404」は綾野剛と星野源がダブル主演する、バディものの刑事ドラマだが、真の主役は綾野剛演じる伊吹。
「感電」の歌詞も語り部は伊吹である。
ドラマを見ていた人ならば、その歌詞が「伊吹的な世界観」で構築されていることが分かるだろう。
「よう相棒 もう一丁 漫画みたいな喧嘩しようよ 洒落になんないくらいのやつを お試しで」
ここなど伊吹そのものだ。最後の「お試しで」など、いかにも伊吹が言いそうなセリフだ。
「愛し合う様に喧嘩しようぜ」
「お前がどっかに消えた朝より こんな夜の方が まだましさ」
一貫して相棒(星野源が演じる志摩)に語り掛ける体であるが、気持ち悪いほど仲が良い。
じゃれあうように喧嘩するのが、何より楽しいのだ。
この曲がアテ書きであることは謎でもなんでもない。
リリース時の本人コメントに「ドラマのコンセプトと脚本を読ませていただき、受け取ったものがいくつもありました。自分が今暮らしている境遇と、ドラマの彼らが巻き込まれて行く物語に共通する部分をそのまま音楽にしました。」とある。
また伊吹のキャラクターを的確に掴んでいることから、かなりの話数まで脚本を読んでいることも確実である。
つまり米津は、ドラマの主題歌である以上、アテ書きした方が良い結果になると判断したのだ。
あいみょんの「会いに行くのに」でも、楽曲製作にあたって、ドラマの設定資料や原作漫画を読んでいるように思われたが、昨今のドラマ・映画主題歌に於けるアテ書きは、大きな潮流になりつつあるのだろうか。
それとも私が知らぬだけで、大昔からそうだったのか。
近いうちにリサーチしてみようと思う。
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