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会いに行くのに あいみょん

今回は、あいみょん「会いに行くのに」を採りあげたい。
ドラマ「アンメット」の主題歌であり、ドラマの世界観を踏襲している。
歌詞は登場人物である脳外科医、三瓶友治が語り部となっている。
つまりはアテ書きだ。
アテ書きに名曲あり。

先ずは冒頭「冷蔵庫の中には食べ損ねたラブレター」とある。
ネットでは「これはバレンタインチョコのことでは?」という秀逸な意見もあった。
後続の歌詞「ひとつづつ白くなる」「もう四月」とあるから、チョコレートのブルーム現象による白化を表しているという説である。
しかし私の見立ては「記憶が失われていくことを、ひとつづつ文字が消えて白紙になっていく手紙として表現」した、というもの。

杉咲花が実にいい

ここでドラマのストーリーについて触れたい。

1年半前、不慮の事故で脳を損傷した脳外科医の川内ミヤビ(杉咲花)は、過去2年間の記憶をすべて失い、新しい記憶も1日限り、寝て起きたら前日の記憶がなくなってしまう記憶障害に。

https://www.ktv.jp/unmet/story/01/

野木亜紀子脚本のドラマ「掟上今日子の備忘録」を彷彿とさせる設定だ。
1日で記憶がリセットされてしまうため、相手役の三瓶が懸命に関係構築しても翌日にはイチから始めないといけない。
「会いに行くのに」の歌詞にはその虚しさ、つらさが綴られている。

歌詞で描かれる人物像とドラマでの人物像はイメージ的に少し差異がある。
歌詞の方は「僕」という一人称が似合うような、原作コミックに近いニュアンスでドラマの方の三瓶はそれより少し男くさい。
あいみょんは原作を読んでいるな、と見る。

再びドラマの話。「1日だけしか記憶がもたない障害」という、都合の良い設定だが、リアリティあるキャラクター造形と丁寧なプロットとで「もしかしたらこんな記憶障害もあるかも」と思わせることに成功している。

杉咲花の代表作となるに違いない出来栄えである。

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