ジャニーズ内の人種差別について考えてみる〜草間リチャード敬太くんについて〜

人種差別ってすごく強い言葉で、いやそんなんないわ!って思う人もいるはず。でも、確かにこの国に存在している。

BLM(Black Lives Matter)という言葉が日本のメディアでも報道されていた去年の春から、一年が経とうとしている。アメリカではもちろん、日本でもデモが行われていた。

ニュースで取り上げられなくなったからといって、決して人種差別がなくなった訳ではない。改めて考えるきっかけを作る、という意味で、自分にとって身近な、ジャニーズという範囲での人種差別、特にマイクロアグレッションやアンコンシャスバイアス(潜在的な差別的バイアス)を見つけた例を取り上げてみたい。

大前提として、人種差別というのは場所によって全く異なる。同じ黒人でも、アメリカで受ける差別と日本で受ける差別は全く別物である。別物であれど、どちらも、改善されるべき重要な問題だ。

最近、ハーフ、ダブルのジャニーズが増えている。Sexy Zoneのマリウスを筆頭に、SixTONESのジェシー、Snow Manの向井康二とラウール、ジャニーズWESTの中間淳太など。デビュー組、ジュニア問わず、少し前の世代よりある意味多様になった。

ここで注目したいのが、Aぇ!グループの草間リチャード敬太くん。黒人のアメリカ人の父と日本人の母をもつ。「ワイルドな見た目」と、全く英語が喋れないはんなり京都人というギャップを持つ、みたいな紹介をされがちである。時々鉄腕DASHに出ている、といえばあまり詳しくない方もわかるかな。

Jrが選ぶJr大賞の結果が乗っているMyojoを読んでいた。彼は、「ケンカが強そう」なJrの1位に選ばれていた。そこにあったコメントは、「直接の関わりはないけれどイメージで」「何度かお見かけしたことがあるけれど、迫力があって強そうだった」など。

もし、ケンカに強いエピソードがあって、親しいジュニアに選ばれての一位ならば、きっと引っかかることはなかった。私は関ジュにめちゃくちゃ詳しいという訳ではないのだが、リチャードくんは割と落ち着いていて、嵐の大野くん的な穏やかな性格のイメージなので、少し驚いた。コメントからもわかるように、あまり面識のない関東ジュニアがなんとなくのイメージで票を入れている、という感じなのだろう。マイクロアグレッションやアンコンシャスバイアスの一例と言える。

もちろん票を入れた彼らに他意はないだろうということもわかっている。忙しい中、雑誌のアンケートなんてそこまで時間を割いて考えていないだろうし。でもこれがおそらく、彼の、アフリカ系アメリカ人のルーツをもつ見た目からくるイメージであり、もし彼が日本人だったり、白人・アジア系とのハーフならばこのようなイメージはつかなかった、ということは容易に想像できる。潜在的に、黒人は暴力的、というイメージがあって、それをリチャードくんに投影している、というわけだ。とても穏やかな人だと思うけどなあ。

彼はしばしばネタで「Aぇ!グループの目印担当」というキャッチフレーズを使う。少しモヤモヤしてしまう。他意のないいじりではあれど、彼が目印になりうる=彼は(この国で)目立ってしまう、異質な存在である、ということの表れでもある。他のハーフ・ダブルのジャニーズタレントは、こんなに見た目の異質さでいじられることはない。ラウールやマリウスなんかもかなりの高身長で街中にいれば目立つこと間違いなしではあるが、彼らの顔立ちがいじりの対象になることはあまりない。これはリチャードくんの黒人というルーツがあるからこそ存在するいじりであり、白人系・アジア系のルーツを持つ他タレントには向けられることがない差別意識が垣間見える。つまりこれは、人種問題なのだ。

日本で生まれ育ったのに、「異質な存在」として笑いにされる。関西のお笑い文化と特に相性が悪い。下のリンクの動画は、YouTubeの企画を考える、というものなのだが、その一つが「リチャードと一緒に街ブラ」である。

それは、彼が”グローバル”だから、という理由だそうだ。日本で育って日本語しか喋れない人と日本で街ブラするのはただの散歩である(もちろん彼のダブルとしての経験は他の5人との経験とは異なるだろうし、その違いは尊重されるべきだが)。彼がマイノリティであるからグローバルだ、と「多様性枠」のように使うのは、なんだかなあ。彼がメディアに出ているとき、そう扱われている瞬間がかなり見受けられる気がする。

ハーフ・ダブルだから云々、という切り取られ方は全体として昔よりはマシになったように感じる。ジェシーや中間くんがロケやインタビューで英語or中国語喋る係みたいな位置付けの時はあるが、その程度で、ハーフ・ダブルであることについて触れるのも、家族についてのエピソードトークぐらいだ。でも、リチャードくんは、彼が黒人のハーフであるからこそ、その異質さを常にネタにされていように感じる。そんな悪質にも思える「いじり」は、数百人いるジュニアの中でどうにか目立ち、覚えてもらわなければならない、という建前で正当化される。メディアとは酷である。

当たり前は変わっていくし、その中で、許される笑いと許されない笑いの境界線も変わっていく。リチャードくんは笑いのセンスがすごく高い子で、彼のアイデンティティや見た目を笑いのタネにする必要は全くない。彼が笑いの対象にされているということは、日本にたくさんいる、黒人のハーフ・ダブルの方も同じように笑いの対象にしている、ということにもなりかねない。それを、メンバーも彼も理解して欲しいなあ。そんなことを笑いのタネにしなくてもあなたちは十分面白い、何目線だよという感じではあるが。

最後に、彼の魅力を紹介したい。ぜひ彼らのパフォーマンス動画をみて欲しい。ゆるーーく追ってる関ジュの中でもかなり好きな一人なので。彼はジュニアの中でもとても歌が上手く、ダンスもうまい。顔がAOC(Alexandria Ocacio-Cortez)に似てるイケメンだなと思っているのだけれど誰にも共感してもらえない。

歌のうまさとダンス力と表現力で十分評価されるべきなのに、「目印担当」というイメージか先行してしまう。それこそが潜在的な人種差別の意識である。そして、人種差別は、海の向こうの問題ではない。俺たちが毎日愛を捧げる推しの中にも存在する、とても身近な問題であり、気づいた人から声を上げ続けなければならない。

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