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仕事とスポークンワーズ⑤(高校受験塾)

※この記事は前回の内容「仕事とスポークンワーズ④(ブライダルMC)」の続きです。

約10年ぶりに塾業界に復帰(2014年〜)

ブライダルMCの仕事のチャンスは土日祝日のみ。また、近年は新婦がリードして披露宴内容を決めることが多いこともあって、婚礼スタッフは女性がメインでした。そのため、女性MCであれば土日祝日の司会業だけで生活していくことができましたが、男性MCは仕事の本数が少なく困難!平日も何か仕事をして収入を得る必要がありました。

そこで、司会業とのダブルワークで7年間続けたのが、進学塾 市進学院での講師業です。最初に就職した日能研とは違って、正社員ではなく非常勤講師。年間契約を結んで授業本数に応じたギャラをもらう「傭兵」として塾業界に復帰しました。元々、震災以降は一つの収入源に頼らない生き方を模索していたので都合がピタリと合った感じです。

約10年ぶりに戻った塾業界は、以前と様子が変わっており、俺が経験のある集団授業よりも個別指導・映像視聴などの学習方法が少しずつ一般的になってきていました。勤務先の市進学院は、千葉県を中心に関東に展開する進学塾。戦国大名でいうと北条氏のような、超オールドスクールの(悪く言えば時代の流れから取り残されつつある)塾でした。「昔ながらの集団授業の非常勤講師」を募集している塾が他にあまりなかったので、拾ってくれて、長く重用してくれて、今でも感謝しています。

塾講師無双

順応に数ヶ月ほど費やしましたが、慣れてくると集団授業の講師はやはり適性があったようで、すぐフィットしました。市進学院の特徴は、公立高校の受験指導を軸にしているところ。公立中に通う13歳〜15歳が、部活と両立させながら実力にあった公立高の合格を目指します。そこそこの規模の塾で、高校入試だけでなく中学入試のコースもあり、個別指導・英会話のクラスを併設している教室もありました。主に夕方からは小学生、夜からは中学生が通ってきました。

新卒で日能研に入社した当時の俺は、子どもとの距離が近いことだけが武器でした。保護者会などでも説得力あるトークができず、勢いだけで授業していた記憶。その後、声優専門学校の担任業務、イベントMC・ブライダルMCの職歴を経由して、経験を積んでから塾講師に戻ったら、プレーに一気に幅が出ました。
単純に子どもを盛り上げて場を作るだけではなく、必要であれば個別に呼んで声かけ(根回し)をしたり、自作の教材を使って反復させたり、保護者にこまめに電話して信頼関係を築いたり。声と言葉を使った対人スキルが上がっていたため、けっこうバリバリ働くことができました。司会業とライブで土日を空けておきたい事情から、7年間ずっと週4日の勤務でしたが、受験学年を担当しなかった年はなく、小3〜中3まで毎週5〜7クラスをレギュラーで担当していました。

【市進学院での担当業務】

中3の英語・国語・社会、推薦対策(作文・面接・ディスカッション)
中3のクラス担任(保護者面談など入試サポート主担当)
中2の英語・国語・社会
中1の英語・国語・社会
小6の国語・社会(※講習時のみ)
公立中高一貫校受験の小6の文系
受験しない小6の英語・国語
小5の国語・社会
受験しない小5の英語・国語
小4の国語・社会・算数(※算数は講習時のみ)
小3の国語・算数
小中学生のLepton(英会語プログラム)の支援員

上記の業務で経験があったのは小4〜小6の社会の受験指導だけです(笑)。なぜこれだけの種類の初めての仕事を振られてサクサクできたのかと考えると、授業の進行は全部スポークンワーズのスキルを使うからだと思います。実施する問題を事前に解いて、授業時間から逆算して構成を考える。準備と本番があるところは司会と非常に似ていました。また、人文系の科目の担当だったため、教科内容も言葉がメイン。国語の物語文の読解などは俳優演技の基本に通じるものがあり、自身の経歴と親和性が高かったと思います。

勤務先がザル(失礼!)だったことで、いろいろな業務を経験させてもらえたことは僥倖でした。ハイレベルな塾は一人の講師にこんなに幅のある仕事はさせないと思います。必ず専門家を配置すると思う。。

《塾講師という生き物の分類》

上段2名:受験指導の大ベテランだが、自由を愛し、敢えて社員にならない名物講師(週5常勤)

下段左:塾の最寄り駅にある大学で理系を専攻する爽やかな20代学生講師(週2非常勤)

下段右:ライブ活動と司会業で土日を空けたいワケあり30代社会人講師(週4非常勤)


高校受験塾とスポークンワーズ

中学生を相手にした受験指導は講師も生徒も大変です。(専門学校で声優を目指す学生たちに芝居のアドバイスをする方が全然楽しいし、お互いハッピー。)しかし、高校に進学しない人は稀です。学習嫌いの子どもであっても必ず直面する壁が高校受験かもしれません。そのため、高校受験の指導でのみ鍛えられたスポークンワーズのスキルがあったように思えます。

【高校受験の指導を経験して身につけたスキル】

★親御さんとの信頼関係構築 → ノークレームで厳しい指導を可能にする

ブライダルMCで心がけている「当事者意識」を担当生徒の家庭に対して持つように意識しました。親御さんと沢山やり取りをして仲良くなった上で、本人とも学習について約束をし、約束が反故にされた時(課題をサボるなど)はガチ切れして徹底的に詰めました。キレる時は本気ですが「ここでキレておこう」という意図があって芝居している部分もあり、保護者には話が通っているため、基本ノークレーム。特にヤンチャな男子生徒は中3の秋頃にならないと学習意欲が高まらないことが多く(それじゃ遅い!)、仕事として学習習慣をつけさせる(←嫌な言葉ですが仕事です)必要がありました。

日能研でハイソな受験指導をしていた時は、知的好奇心を刺激するような余談やゲームで学習内容に興味を持ってもらうなど動機づけをしていました。しかし、公立高の共通問題は難関私立中とは問題の質が異なります。地道な反復演習や物量が効くので、小テストを繰り返したり、過去問ノートをこまめにチェックしたりと比較的ビシバシやりました。クラスに対してハッパをかけるような、泥臭く狡猾なスポークンワーズの使い方をしました。

★試験を突破するための自己表現の指導

高校入試の指導では、これまでやったことがなかった仕事がもう一つあって、とてもハマりました。推薦入試対策です。面接・作文・グループディスカッションの指導は、学習指導と比べて正解が一つではなく、生徒ごとに違った演出をつける必要がありました。そして、声優事務所のオーディション指導よりも深かったです。

他の講師はこの指導をあまりやりたがらず、自主的に俺が学年の推薦受験者を集めてトレーニングをしていましたが、前述の泥臭い学習指導よりもこっちでスポークンワーズを使っていきたいと思いました。いわばファシリテーターで、生徒たちにトライしたことやそれに対する振り返りを発言してもらい、アドバイスを加えるという柔らかい指導です。推薦入試対策で感じたことは以下の記事に書いています↓

推薦入試の対策は、のちに関わる就職支援の仕事(書類添削・面接練習)に極めて近く、人の言葉を引き出すような要素があって魅力的でした。何より生徒が自分の言葉で何かをアウトプットするので、一方的な知識の伝達よりもやりがいを感じたのです。自分の職業人人生が就職支援に行き着くきっかけになったと思います。

こうして、司会業と塾のダブルワーク+ライブ活動で、これまで身につけたスポークンワーズのスキルが花開いた感がありました。責任重大だけど、「喋り」で食べている。1日6時間労働で生活に必要な収入が手に入る。塾の仕事が始まるのは夕方からなので、平日の日中はライブの稽古や曲作りができる。そんな気ままな生活は7年続き、やがて終わりを迎えました。2020年3月、新型コロナウィルスの流行によりライフスタイルそのものを変革する必要に迫られたのです。(つづく)

高校入試当日は朝から腕章をつけて担当生徒を激励する「入試応援」が行われる。
塾講師たちが早朝に場所取りをする様子は合戦のよう。こういった中に俺もいました。
「金曜は授業→土曜はライブ→日曜は司会」など日によってモードが変わったが基本は「喋り」


【次の記事】仕事とスポークンワーズ⑥(職業訓練校)はこちら▼


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