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10周年

「田丸先生、来られないって」
「そうか。残念だなぁ。まぁ、仕方ないか。急にお誘いしたし」

 ここは都内一流ホテルのパーティ会場。
ショートショート作家、田丸雅智氏の作家業十周年を祝して、大勢のファンが集まっていた。
会場には祝辞や差し入れ、イメージカラーの青い洋酒壜なども届き、華やかだ。

 しかし、主賓の田丸氏は多忙を極め、やむなく欠席するとの事であった。

「残念だが、とりあえずカンパイしよう」
「皆さん、グラスをお持ち下さい」
「カンパーイ!」
 一口飲んだ次の瞬間。みな青い海の前に居た。
「一体これは……?」
「何とかマッピングとかいうやつ?」
「いや。本物だ」
 郷に入っては郷に従え。
 皆、子供のようにはしゃぎ、青い海を堪能し、これ以上ない程に笑い合う──そして気付けば元の会場に戻っていた。
「今のは何だったんだ?」
「あっ!」
「どうしたの?」
「お酒の壜にこんな手紙が」


"海酒の味はいかがでしたか? 田丸雅智"

        (了)


※本作は以下の企画に参加しております。

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