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くろよん

第二次世界大戦を知っている人間は今は少なく、大戦の話題と言ったら終戦記念日やお盆の特番くらいになったでござる。
そんな大きな歴史の話すら年に数回なのだから、終戦後の高度成長期と言われる時代の話題が出るのは稀有と言ってよいな。
現代社会の話題と言ったらもっぱらエンタメや流行であるが、吾輩はそういった話題に疎い(´Д`)
そして現代人の生活の大きな力になっておるのが電気でござるな。
何をするにも電気が必要、現代人は幼少期からスマホやタブレットを所有しておる人間も多く、電気がなくなると食事や明かりよりスマホの電源確保を優先する人間も多いことであろう。
大学の論文もスマホで書く時代である。
旅行するにもスマホで行き先を検索するのだ。そして観光地に着くとスマホのカメラでパシャリ。
携帯電話も無く、カメラも手軽には買えなかった時代を生きた人間にとっては「えらい時代になったものだ」などと思うだろう。
でもそれらが当たり前な時代に生まれた人間にとっては、蛇口をひねれば水が出るのと同じくらい当たり前すぎて意識すらしていないことだ。

まぁ...ふわっと聞いてくれればよい。


くろよん

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皆さまはくろよんという言葉を聞いたことはあるかな?
富山県にある黒部ダムや下流にある発電所の昔の別称である。発電所の名前が「黒部川第四発電所」ということで略称として「くろよん」と呼ばれていたのだ。
ここまで読むと「あー、黒部ダムのことか」「聞いたことはある」と思う者も多いことと思う。
ものすごい規模のダムゆえ、日本でも有数の観光スポットとなっておるからでござるよ。観光で訪れたことがある者も多いのではなかろうか。

さてさて、なぜ終戦の話からスマホの話を通過してくろよんに着地したのかと申すと、黒部ダムとは終戦後に建設された水力発電専用ダムだからである。

電気でござる。

1963年に関西電力が、富山の黒部渓谷という非常に険しい渓谷に流れる黒部川に設置し、現在も運用されている。
ダムから一気に放水される光景がそれはそれは壮大で、これを見るために日本中、ひいては世界中から観光客が訪れる。
この放水で発生する水力を利用して発電するわけだ。

と、簡単に説明してしまったが、このダムはたくさんの日本人の血と汗と涙と魂が染み込んだ建造物なのだ。
文字通り血と汗と涙と魂...

黒部ダムにケガはない。

高度成長期の真っ只中にあった日本、関西は深刻な電力不足であった。「計画停電」という言葉はここ10年ほどでよく聞くようになった言葉であるが、戦前戦後の関西は日常的にこの計画停電が行われていたそうな。
この電力不足によって、戦後の復興も思うようにはかどらず、人々は疲弊しておった。
実は黒部ダムの建設は大正時代から計画されていたが、当時の技術ではこの大秘境を切り崩すにはあまりにも難しい工事であり、計画→失敗を繰り返しておった。
そんな中、上記の戦後の復興や高度成長期が合わさって、関西の電力配給は限界を超えておったそうな。
関西電力は、何度も失敗したこの黒部渓谷に再度挑戦するしかなかった。
1956年、工期7年、総工費513億円で着工された黒部ダム。(最終的な費用はもっともっとかかった)
それは想像を遥かに超える難工事であった。

大秘境のど真ん中、工事現場に到達するのも命がけ。
到達するも、少しの工事ミスで命を落としてしまう。
そんな環境での作業だったそうな。
「黒部ダムにケガはない」
ミスが直接死につながることから、当時はこのように言われていた。

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写真:作業現場に向かう人々
足を滑らせて転落した人間もおったそうな。

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写真:関西電力からお借りしました。

血と汗と涙と魂 つまりは命

多くの作業員が命を落としながらも続けられたダム建設。
それほどに電力不足は深刻であったのだ。

秘境のど真ん中の作業ゆえ、作業員はもちろん泊まり込み。冬季は完全に閉鎖された環境だったそうな。
作業員は食糧難でも苦しめられ、野生の動物などを食べていたと聞いたことがあるでござる。
食糧難や過酷な作業だけではない。突然現れる雪崩で命を落とした作業員も多かった。
こうして、171人もの殉職者と1000万人以上の作業員の力によって黒部ダムは完成したのだ。

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写真:関西電力からお借りしました。
いまだに行方不明の作業員も...

さいごに

充電器をさせば電気が流れるのは当たり前である現代。
多くの人に電気を配給するために命をかけ作業にあたった有志たちのことを意識しておる人間はいかほどであろう。
「世紀の難工事」と呼ばれたこの一連のダム・発電所の建設はこれからもずっと一部の人間が語り継いでゆくと思う。
その語りに耳を傾けながら暮らしていきたいものである。

今回のよもやま話はこれでおしまい。
見聞いた話もあるゆえ、間違えている部分もあるやも。
興味を持ったなら、たっぷりと充電したスマホで検索でござる!

最後まで読んでくれてありがとう。

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