#読書感想文# ここ数年で一番おもしろかった『革命前夜』

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出会いは本屋さん。
「文庫担当が今、1番読んでほしい本」という力強い手書きのポップに目を奪われて、つい手に取ってしまった。
いつもは気になる本を見つけても、まずは図書館に置いてないか調べるけど、冒頭から引き込まれて即購入した本。


第一章 銀の音
今日、昭和が終わったのだそうだ。
日本から約九千キロ離れた東ベルリンの空の下、激しく揺れる車の中で、僕はその知らせを聞いた。

出典:須賀しのぶ『革命前夜』(文春文庫)冒頭より


物語は1989年、昭和が終わり、新しい時代の幕開けと共に始まります。
個人的には自分が生まれた年でもある。昭和の純文学は読むけど、ピンポイントで平成初期が舞台の本はあまり読んだことがない気がする。
自分が生まれた年に何が起きたのか、「生まれ年のワイン」なるぬ、「生まれ年の本」を見つけた喜びで即決しました。

とはいっても、ストーリーの舞台は日本ではなく東ドイツ。この年のドイツといえば、東ドイツと西ドイツを隔てるベルリンの壁が崩壊し、長い冷戦が終わった歴史的な年。

主人公はピアニスト志望で日本人の音大生眞山柊史。彼が音楽留学のため選んだのは、バッハの故郷である東ドイツでした。
当時の東ドイツはソ連下の社会主義国。この本で知ったけど、民間人の中に秘密警察「シュタージ」が混じり、知り合いのことも平気で密告してしまうという。(お、、恐ろしい)
そんな監視社会の中でストイックにピアノに打ち込みたいとう彼、なかなかドmな発想…。

才能があり個性豊かな音大生たちも登場して、激動の時代を共に駆け抜ける読み応え満載な青春小説でした。ここ数年読んだ本で一番おもしろかった。

ジャンルとしてはエンタメ小説なのかもしれないけど、文章の表現が繊細で綺麗で、純文学を読んでいるように世界観にひたれる。
歴史の背景や建物の描写が詳細なので、もちろん行ったことない当時の東ドイツの風景が鮮明に頭の中に映しだされた。

自分が生まれた年の出来事なので、教科書で読んだ「ベルリンの壁崩壊」は特に印象に残っていて、本を通してその時代のドイツに連れて行ってもらえたような、歴史的瞬間に立ち会えたような、不思議な気持ちになりました。

著者である須賀しのぶさん、どれだけ資料読み込んだのよ。そしてそれを文章で表現する技術よ..すごい...。

作中ではバッハの曲がたくさん出てくるので、クラシックが好きな人にもおすすめ。
音楽小説は、曲を聴きながら妄想しながら読むのが楽しい。 著作権切れてるクラシックなら大抵YouTubeにアップされてるし、便利な世の中です。



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