プロローグ
鳥カゴより少し大きい程度のスペースで、
まるでコインロッカーのようなせせこましさ。
ガラス1枚を隔て、物流のトラックが多数行き交う県道に面した場所。騒音はもちろん、振動もある。
私には、中の衛生環境が良いように見えなかった。その証拠に、干してあるタオルがすでに汚かった。
以前に勤めていた会社の向かい側にあった、チワワ専門店。
店の前には定期的にワゴン車が停まり、新しく販売されるチワワが運ばれてくる。きっと入れ替えもあるのだろう。
立地的に、あまり繁盛している感じは見られず。「○%OFFセール中」の貼り紙もよく見かけた。
出勤する時、
お昼休みに事務所を出る時、
夕方に外の自販機に向かった時、
帰る時、
聞こえてくるのはたくさんの甲高い鳴き声。
6年、7年も同じ道を通い続けていると、
感情は不快を通り越してだんだん怒りに似た感情へと変わっていった。
こういう店があるから、棄てられる命がゼロにならないのか。
それとも店というのは、商売というのは、命の尊厳とかいう倫理的なことを深く考えていたら、成り立たないものなのか。
生き物の命が……とか言ってたら、自分が生きていけないじゃない。本末転倒だよ、そんなもん。じゃあ聞くけど、私の命はどうだっていいわけ?
こんな無慈悲なブリーダーは、この会社に勤務していた時に私が対応した人間、ひとりだけだと思いたい。
会社を辞めた後、家にいる猫たちの命をより深く考えるようになった。
そして、なんとなく思った。
猫たちの命と人間の命を同列に見ようとするには、むしろ人間以外の生き物の命を重く考えるところからはじめないといけないのではないか。
というわけで、はじめてみます。
「猫、優先主義」
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