「テツローも一緒にバイトしないか? ヨッチャンが週末に行ってる清掃会社が、人を探してるんだって」 中学校時代からの親友であるミズチャンが、そう声を掛けてきた。 …
今日も一日が終わろうとしている。もう眠らなくてはならない時刻。だが、眠れない。私は小さなダウンライトを灯らせ、曲を掛けた。 スピーカーからピアノトリオのjazz…
「テツローも一緒にバイトしないか? ヨッチャンが週末に行ってる清掃会社が、人を探してるんだって」 中学校時代からの親友であるミズチャンが、そう声を掛けてきた。 ヨッチャンの本名は吉田である。そして、ミズチャンは水谷という名字だった。 あっ、ぼくらは名前を「チャン付け」で呼びあっているけど、決して妖しい仲って訳じゃないんだけど…… アルバイトの内容は、事務所ビルの床清掃だった。請負先の会社が休みの時に、そこの床を洗剤で洗う。その後、ワックスを塗って仕上げる作業だ。
今日も一日が終わろうとしている。もう眠らなくてはならない時刻。だが、眠れない。私は小さなダウンライトを灯らせ、曲を掛けた。 スピーカーからピアノトリオのjazzが流れる。すると部屋の空気が一気に変わって行った。条件反射的に酒が欲しくなる。手元にバーボンのオン・ザ・ロックを用意した。 グラスを見つめる。じっと何かを考えていた。カラン…… 透きとおる音。ダブルロックの氷が半回転しながら位置を変えた。 さらに耳を澄ませてみる。聴こえてきたのは…… 人生のアヤマチの音だっ