こんな素敵な夜に…
今日も一日が終わろうとしている。もう眠らなくてはならない時刻。だが、眠れない。私は小さなダウンライトを灯らせ、曲を掛けた。
スピーカーからピアノトリオのjazzが流れる。すると部屋の空気が一気に変わって行った。条件反射的に酒が欲しくなる。手元にバーボンのオン・ザ・ロックを用意した。
グラスを見つめる。じっと何かを考えていた。カラン…… 透きとおる音。ダブルロックの氷が半回転しながら位置を変えた。
さらに耳を澄ませてみる。聴こえてきたのは…… 人生のアヤマチの音だった。
何か分からないけど、素敵な夜だ。そんな気がした。閉塞ぎみな人生だけど、いまの私にはいい音楽と酒がある。もうそれだけで十分じゃないか。ね、そうでしょ?
「あぁ、強めの酒にオレは癒されている…」
グラスを見つめ、そうツブやく。
しかし本当の癒しとは、どうもそれではないような… 頭の片隅で、ずっとそんなことを考え続けていた。
なにはともあれこの世に酒があってよかった。
ひとり寂寥感を噛みしめる。だが、ここにもう一人いたところで、この孤独感は去らない。だからといって、三人以上では疎外感が増すばかり……一体、この私は何者なんだ。
でも……スピーカーから流れ出る音を聴いていたら、ふとこんなふうに思った。
リアルの世界は、幸せ不幸せ、いろいろあるけれど……結局のところ時は流れ、灰が崩れるように消えて、無と化して行く。
オレ達は、その事実を、ただ受け容れて行くしかない。だがそれを、ある特別な力で別の形に姿を変えれば、受け継がれて行くのかもしれない。たぶんそれが、いまこうして文章を書いている意味なのかも……それが文字というものの力なんだろう。
文章を書くことで癒やされる。そういうことは、確かにある。
ちょっとまた、何か書いてみようかな…… そういまの私に必要なのは、心の対話。対話という、心の彩りかも。
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