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少年時代の秘密の味

ファーストキスはレモンの味だの、初恋はイチゴの味だの、
分かるような分からないような味です。
こういうのに果物が使われがちなのはやっぱり「かわいさ」ですかね。

そういえば大学生のとき、ゼミの先生が使っていた言葉を思い出しました。

うちのゼミ生(とくに女子)は「かわいがられビリティ」がない。

それゆえ、「いいゼミ」なんですって。
分かるような分からないようなアビリティです。
でも、このアビリティをもっているか否かで、確かに〈在り方〉が決まるような気もします。
わたし、この齢にしてようやく「かわいがられビリティ」を身につけつつあります。
もう、その方が、圧倒的に得だもの!

で、秘密の味の話です。
少年時代、近所の幼馴染(男子)とよく2人で遊んでいました。
前回に書いた「ごうくん」のような人気者ではなく、どちらかというと物静かで、一緒におままごともできちゃうようなタイプです。

彼と遊んでいるときに1ぴきの捨て猫を発見。
当時は捨て猫って多かったなぁ。
わたしたち、急いで保護(のつもり)をして、親にばれないように育てることを決意しました。
段ボールハウスをこしらえて、大人の目につかないところに設置して、こっそり冷蔵庫から牛乳を持ち出して。

しかし食べ物がない。
少年2人は知恵とお金を出し合いスーパーへ。
そこで買ったのは・・・

リプトンの紅茶の粉。粉です。
きっと、まだ固形物は食べられないと判断したのでしょう。
インスタントの紅茶の、粉。レモンティー。
出た!レモン!

猫さんにやろうとするも、食べません、舐めません。
大量に入ったお徳用の缶なので、もったいない。
仕方なく舐めてみるわたしたち。

!!!!!

おいしい!脳天を突き抜ける、魅惑の甘さ。初めての味。
猫さんそっちのけ、夢中で舐め続ける小学生。
半分ほど舐めたところで日が暮れて、
じゃんけんで負けた私が持ち帰りました。
当然、親に見つかり、芋づる式に猫さんも見つかり、すべて白状。

秘密の段ボールも牛乳も猫さんもすっかりなくなりました。
あの猫さんはどこかで保護してもらえたのかしら。
幸せになっているといいな。

手元に残ったのは半分ほど残った紅茶の粉。レモンティー味。
我が家のおやつタイム、しばらくレモンティーが出てくるのでした。

ファーストキスは檸檬の味。
そして、少年時代の秘密はレモンティーの味。
甘酸っぱい思い出です。

音瑚ひらり






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