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〔ショートショート〕復習Tシャツ

「俺、すごい物発明したぞ!次のテストはこれでバッチリだ!」
T高校の発明同好会に、ヒラ部員の勝浦が駆け込んできた。
「またかよ。今度は何だ」
部長の吉野がウンザリしたように言う。部長と言っても、同好会メンバーは二人しかいないのだが。
「ほら、漫画の秘密道具に、パンにノートをペタっと写して食うヤツ、あっただろ?俺の発明はさ、食わなくても良いんだ。その名も『復習Tシャツ』!ノートを押し当てて写せば、これを着るだけで頭に入るんだよ!スゲえだろ?」
勝浦はそう言って制服のカッターシャツを脱ぎ捨て、中に着ていたTシャツを見せる。数式やら年号やら漢文やらがひしめくTシャツは、耳なし芳一を思わせるビジュアルだ。
やがて吉野が静かに言う。
「…なあ、勝浦」
「ん?吉野も欲しいか?」
吉野は溜息をついた。
「これ、100%カンニングだと思われる。やめとけ」
「えっ!あ…そんな…」
ガックリと肩を落とす勝浦に、吉野はそっとカッターシャツを渡してやった。
(完・410字)


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