〔詩〕フィナーレ
街クジラを僕が見たのは
寂れた商店街のアーケードの下
半透明の巨大な体で
店も人々も通り抜けると
夕空に薄れて消えていった
閉園前の遊園地
廃校前の小学校
かつては賑やかだった場所に
街クジラは現れる
プランクトンのように過去を飲み込み
綺麗な想い出だけを残していく
細々と商いを続けていた
商店街の店主たちは
クジラが消えた空を見つめて
ホッとしたように微笑んだ
淋しいけれどこれでいい、と
もう頑張らなくていいんだ、と
ジャズが流れる喫茶店も
気に入った本しか売らない書店も
みんな想い出になるのだろう
夕空を見つめる僕らの目には
僕らの海が溢れていた
シロクマ文芸部のお題に挑戦しました。難しかったけれど、楽しかったです♪
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