騙されやすい私が、まんまとカモにされた話
最近、偶然知り合った子がいる。
通常、私に知り合いなどは出来るはずがない。
なぜなら私は、普段一歩も外へ出ない生活を送っているからだ。
どういった経緯で知り合ったのかは割愛するが、知り合ったその時から、彼女はとても社交的だった。
見ず知らずの私に手作りのケーキをくれたり(誰にも会いたくないので玄関に置いておいてもらった)、一緒に遊ぼうと何度も声をかけてくれた(誰とも関わりたくないのでなんやかんや理由をつけて断った)
彼女は私よりも随分若い子で、なぜ私のような中年の平凡な女に声を掛けてくれたのか全く分からなかった。
夫は「ねずみ講じゃない?w」と冗談混じりに笑っていた。
ある日、再び彼女から連絡が入る。
いい感じのお店を見つけたから一緒に行こう、というものだった。
卑怯な私は、「今度行ってみるから場所を教えて欲しい」とお願いした。
しかし彼女は、場所がわかりづらいから案内をすると言ってくれた。
完全に断れない空気になり、引きこもりが外へ出る決意をせざる得なくなった。
彼女と会うその日まで、どうすれば断れたかを永遠に頭の中で考えていた。
今後同じようなことがあった際、スムーズに相手を傷付けることなく断れなくてはならない。
これは彼女がどうとかそういう問題ではない。
私はただただ家にいたいのだ。
家にいて、猫と過ごしていたいのだ。
家が私の城なのだから、必要最低限の外出以外で外へ出なければならない理由がない。
なんて寂しい人生だと思う人もいるかもしれないが、家が好きでたまらない人間も存在する。
友人も作らず、夫と猫とだけ関わって生きていく人生。
それの何が悪い。
最高じゃないか。
彼女と会う日を前日に迎えた私は、ギリギリまで何か断る理由はないかを考えていた。
他人と出掛けるということは、その後訪れるであろう胃痛・腹痛に耐えられるだけの準備も必要だった。
そして結論が出ないまま当日を迎えてしまう。
もう、行くしかない状況になった。
夕方頃に待ち合わせをし、早速お店に向かった。
レトロな雰囲気の漂うそのお店は、知る人ぞ知る、という感じだった。
初めて遊ぶ他人と、初めて行く店。
私にとっては最悪の組み合わせだった。
そして彼女はこう言う。
「今からうちに来ませんか?」
こういう突然の出来事に、私は大体対応しきれない。
コミュ障な癖に愛想だけはいいので、面と向かって断るという選択肢はない。
そんなことしたら、断られた方がショックを受けるのではと考えてしまうからだ。
まだ出会って間もない相手ですら傷付けたくないのだから、本当に生きづらい人生だ。
誰も傷付けずに生きていくなんてことができるはずもないのに、それを望んで止まない。
彼女の家に到着し、部屋を見せてもらったりしながら雑談をした。
自分の過去の話だったり、交友関係だったり、意外にも様々な話で盛り上がった。
彼女の部屋に大量のサプリがあったため、私も難病を患っている関係でサプリが趣味であることを話した。
自分が好きな共通の話題で盛り上がれることがとても嬉しかった。
この感覚は久々で、とても稀有な子だと思った。
現代の野菜には栄養が不足しているためサプリで補う必要性があることや、戦後のタンパク質摂取量が激減している点など、ほぼほぼ認識は同じだった。
どこのサプリを摂取しているのか聞いたところ、ネズミ講で有名なそれだった。
その時、夫が冗談混じりに言っていた「ねずみ講じゃない?w」の一言が頭の中を駆け巡る。
そんなこんなで私は、2万円分もの商品をあれよあれよという間に購入していた。
全く、巧みな手口である。
ただ、手切金だと思えば、2万円程度は安いものだ。
もうこれで二度と連絡が来ることはないだろうし、関わることもないだろう。
いくらこちらに良くしてくれたところで、全てはその為かと思えてしまうと残念ながら友情は成立しない。
目的が分かっていたなら、自分の過去の話も仕事の話について詳細に話すこともなかっただろう。
その後私がその商品をとても良いと気に入ったところで、私は誰かにそれを伝えたり、発信することはない。
せっかく何かの縁で出会いとてもいい友人になれたかもしれないのに、たった数万数十万のためにそれを棒に振るようなことはしたくない。
しかし、彼女が悪いということでもないと思っている。
人は状況により行動するものだ。
金銭的な問題や人間関係など、様々なものが起因となって人は行動をする。
人間性とはまた別の話なのだ。
これだから私は家が好きだ。
改めてそう感じた出来事だった。
nekogaki
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