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【読書日和】「私はチクワに殺されます」(五条紀夫著)を読んで~身近に凶器が潜んでいたら~


 怖そうな本を手に取ってしまった。だが、作者が、「『祈願成就 霜月透子著』より怖くない」と言っていた。だから手に取ったのだが、最初からガツンと来た。描写が怖い! 嘘つき! と思った。しかし、その後すぐに、「チクワ」。怖がるべきか、笑うべきかで迷った。そんな始まりだった。
 章ごとに視点が変わる作品。それも独白のよう。それが面白いと感じた。描写は怖いけれども! 大事なことなのでもう一度言うよ。怖いけれども! 
 日付が細かく記載され、記載されているからか、私の中の時間軸がずれていく。いつ、どこで、誰が、何を、した? された? そんな思いが何度も繰り返し、私を襲う。逃げたい。でも、最後まで行かないといけない。そう思い、私は最後まで読みきった。そして冒頭へ戻る。
 何がなんだかわからなくなった。でも確かに「チクワ」はあったのだろう。そう、この作品には書いてある。だから、それが答えなのだと思う。
 そして、明日、私は「チクワ」を買うだろう。その穴を覗くために。でも、覗くのは、生き物ではなく、空にしようと思っている。

 最後に一言。「怖くない」と言った、そこのあなた。怖かったよ!

 作品は怖かったけれども、このしおりにほっこりした。それがせめてもの救いだった……。



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