見出し画像

【本】[第三章 プロテウス] 『ユリシーズ 1-12』(ジェイムズ ジョイス、柳瀬 尚紀 (翻訳)/河出書房新社)

こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。

引き続き『ユリシーズ 1-12』の3章を読みました。

ダブリン1904年6月16日、時刻は午前11時~11時30分
スティーヴンは海岸を歩いています。
章タイトルのプロテウスとは海神ポセイドンの家畜であるアザラシなどの海獣の番人で、未来を教えてくれるそうです。

〇第三章の感想と粗筋

海岸を歩きながらスティーヴンは妄想しています。
トネリコのステッキが、妄想の中では剣に変わっています。
女嫌いらしいスティーヴンは、遠くから見かけた産婆まで罵ります。

マリガンとの約束があるので、12時半になる前に新聞社へ行かなくちゃいけません。
妄想の中では、ついにスティーヴンの父親(声だけ)登場します。
親戚の名前が、セアラ叔母/サリー叔母/サイ伯父とつづきます。スティーヴンもそうだけど、全部Sがついていますね。

スティーヴンはリッチー叔父の家に行きます。リッチーの息子ウォルターがドアを開けてくれます…と思ったらこれまた妄想のようです。つづいて父親が親戚を罵倒する記憶に浸ります。

それからパリのケヴィン・イーガンのこと、大学時代、今朝のマリガンとの嫌な会話を思い出します。そうして今夜、塔に帰るかどうかを迷っています。
パリで暮らしていた頃に、ケヴィン・イーガンなどアイルランド人同士の付き合いがあったようです。

海岸で鳥貝掬いの二人とそれにじゃれつく犬を眺めたりするうちに、詩を思い付いて、スティーヴンは校長の投稿の紙をちぎって書きつけます。

それから、こんな不思議な言葉。
「あそこは五尋潟さ。優に五尋の深みにそなたの父親は寝ておられる。一時に、と仁助が言った。」

アイルランドに「仁助」とは…。なにか語呂あわせがよかったんでしょうかね。辞書によると、江戸時代の船頭・馬方、または中間 ・小者などの奉公人とあります。もしかしてこの不思議な言葉が、プロテウスからの予言にあたるのでしょうか…。

〇気になった言葉など
・「物体における」
・スティーヴンが履いているブーツは、マリガンからの借り物?
・コンコンと叩くホメロス?
・フェランドの登場のアリア(コジ・ファン・トゥッテ)が、ヘタクソなのね。
・リチャードバーク大佐クラーケンウェルの石塀
・溺れかかった人間て、誰のことだろう。昨夜、豹の夢を見て、スティーヴンの安眠を妨げた男だろうか。

〇まとめ
妄想は行ったり来たりとりとめがないですが、それを文章にするときは、主語(ぼく→おれ)を変えてみるとか、語調を強めるとか、誰かから話しかけられている感を出すとか、「さっきのは妄想だ」とわかるような書き方をあとからするとか、そういう工夫に感心しあした。

全ての固有名詞を理解することは諦めましたが、アイルランドの宗教・歴史・政治がわかっていれば、読んでいてきっともっと楽しいのでしょうね。

■本日の一冊:『ユリシーズ 1-12』(ジェイムズ ジョイス、柳瀬 尚紀 (翻訳)/河出書房新社)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?