2023年夏の青空文庫感想日記と今(前半)

去年の夏、「なんか名作を読もう」という気概が生まれ、かといって長編を読む余裕はなかったので青空文庫にある短編小説を21本読んだ。せっかくなのでその当時ツイッターに投稿した感想(と蛇足だが今のコメント)をまとめてみた。
まず前半の11本。

2023.7.31
『桜の樹の下には』梶井基次郎
「俺には惨劇が必要なんだ」の部分にゾワっとした。美しいものは惨劇でできているって想像することで心の平衡が保たれるの分かる。何万匹もの薄羽カゲロウの屍体の情景とかすっと浮かぶのがすごいと思った。名作だわ
(今の感想)
内容は正直あんま覚えてない。けど脳内に浮かんだこの鮮烈な情景は覚えてる。ゾクッとする色彩の作品。

2023.7.31
『注文の多い料理店』宮沢賢治
「すぐ食べられます」のところ、日本語面白いなあと思った。初っ端から犬死ぬやんと思ったら危ないところを救ってくれるいい子ら…。なれない状況をいいようにいいように解釈しちゃうの、危険だね。
(今の感想)
そういや犬おったな。名作やのにあんま内容知らんな~って読んだはずやけど案の定もう内容おぼろげ。当時の感想も薄い。

2023.7.31
『山月記』中島敦
「臆病な自尊心と、尊大な羞恥心」が李徴の虎だったんだな。なまじ賢かったばかりに人から学ぶことを恐れるようになるところも、怪異になり果てた後も妻子よりも自分の詩句を大事にしてしまうところも、人間らしい
(今の感想)
珍しくまとまってていいレビューだな。虎になったのにあまりにも人間臭いところ、いいなと思った記憶ある。

2023.8.1
『鼻』芥川龍之介
他人の不幸には同情はするが、それを切り抜けられたら物足りないしもう一度同じ目に合わせたくなる「傍観者の利己主義」は自分の中にもある。最後内供に長い鼻が戻ったのは喜ばしいことなのか、うーん
(今の感想)
めっちゃ僕らしい感想。今もあまり成長はしていないようだ。

2023.8.1
『杜子春』芥川龍之介
杜子春って名前やったんや。元大金持ちだとか仙人の修行でどんな魔性が現れても返事をしないとかが仏陀モデルなのかと思ったけど、杜子春は母の愛に返事をしてしまったからこそ仏にはなれなかったのかな。一人の人として生きることの肯定というか人間賛歌みを感じた。
(今の感想)
内容はおぼろげ。でもこのころの僕いい感受性してるなと思う。

2023.8.1
『原爆小景』原民喜
「コレガ人間ナノデス」「スベッテアツタコトカ アリエタコトナノカ」
最後の詩は「とはのみどりを とはのみどりを ヒロシマのデルタに 青葉したたれ」
(今の感想)
読んだ当時、何を書いても言葉で表せないと思って、引用だけした。それでもどの部分を引用するかかなり迷った記憶がある。これを書いたあとたまたま初めて原爆資料館に行く機会があり、今この3句はより胸に響く。

2023.8.1
『檸檬』梶井基次郎
不安が好きなものさえ奪うのも、みすぼらしくて美しいものに惹かれるのも、自分のいる場所から逃げたくなるのも、言語化がリアルで作者が心配になる。「つまりはこの重さなんだな」って檸檬に安らぎを見出して終わりじゃなく、爆弾として手放して終わるのが不気味な爽快感ある。
(今の感想)
梶井基次郎って鬱だよな。どうしても心理描写に引き込まれてしまう。

2023.8.2
『故郷』魯迅
「わたしは今の故郷に対して何の未練も残らないが、あの美しい記憶が薄らぐことが何よりも悲しかった」
閏土…。子どもの頃と変わってしまう立場と隔絶は、故郷を離れたことがある誰もが経験することだよな。美しい思い出はそのままに置いておくのが正解かもしれない
(今の感想)
人間関係だいたいそう。

2023.8.2
『やまなし』宮沢賢治
幻燈がフィルムの投影?なら宮沢賢治の思い出みたいなものなんだろうか。兄弟蟹がクラムボンって言ってたもの(多分泡)を数ヶ月後には「泡」って言ってるのが幼児の言葉の成長ぽい。宮沢賢治は情景を思い浮かばせるのが上手いなあ。頭の中がきれいな川の中になった
(今の感想)
小さい頃教科書で読んだ時には当然「幼児の言葉の成長ぽい」って感想はなかったからここに気づけて嬉しかったな。幼児語って大人側からするとそのままでいてほしいなってだめなんやけど思っちゃう。

2023.8.2
『トロッコ』芥川龍之介
子どもの頃の大人の仕事道具への憧憬だとか、なのにすぐ飽きるとこだとか、一日の冒険を大人になってふと思い出すところとかいいな。時代感的にエッセイなんだろか。でもなんで知名度高いかはあんま分からんかった
(今の感想)
気に入った名作でも全然内容忘れてる僕が、トロッコで帰れんくなった絶望感とか珍しく情景とストーリーを割と鮮明に覚えてるからそういうとこが名作たる所以なのかもしれん。

2023.8.2
『愛撫』梶井基次郎
「猫の耳というものはまことにおかしなものである」からの切符切りで切ってみたいわ~の落差、4行とは思えん急スピードの書き出し。猫の爪を全部切ったら絶望で死んでしまうだろうなって妄想がゾクゾクする。最後の仔猫への脅迫のような歪んだ愛情がまた好き
(今の感想)
梶井基次郎、当時の感想読むだけでもどれも好きやけどことごとく内容があやふやにしか思い出せんの不思議やな。鮮烈な印象が強すぎて全体が残らない白昼夢みたいな。


当たり前やけど、1回読んだだけの本は覚えてないほうが多い。でも短い感想書いてるだけでもう1回読もうかなって気になるから書き留めておいてよかったな。一番印象に残ったところを引用してたのも、変わらない今の自分のツボにも刺さるからよかった。また気が向いたら後半。

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