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第3話:やっぱりジェネレーションギャップだろ。

僕がガードレールの鎖に足を取られてズッコケた次の日。
その日は日曜日で、とくに予定もなく僕は車なんか洗車していた。

そしたら朝早くにスマホの着信音が鳴った。
ほとんど妻とのやりとりしかなかった僕のスマホに誰から?と首をかしげた。

「もしもし・・・分かります?」

「え?・・・もしかして?佐藤さん」
「ほんとに連絡くれたんですね」

やっぱり変わってる子だと思った。
会って話がしたいと言うので、昼から会う約束をした。
これは予想だにしない展開。
まあ、いい・・・僕も言っておかなきゃいけないことがあったから・・・。

昼前に某駅前で彼女を待ってると彼女がやってきた。
店の角を曲がって遠くからやってくる彼女、最近の若い子はスタイルがいい。
外人の女性みたいにナイスボディー、でも外人の女性みたいに鳩胸出っ尻じゃない。
彼女は僕とは次元の違うところにいるんじゃないかとさえ思えた。

こんな綺麗な子に彼氏がいないのはおかしい。
最初に思う素朴な疑問だよね。
それはちゃんと聞いておかないと・・・彼氏持ちなんです、なんて言われたらお友達にだってなれない。

それから、ふたりで昼ご飯を食べに行って気になってた彼女に今、彼氏がいるかどうか聞いてみた。
そしたら意外な答えが返ってきた。
現在、彼氏はいなくて大学時代、付き合ってたおじさんがひとりいたらしいが、それ以来ずっとひとりなんだそうだ。

で彼女は、これから僕とお付き合いしたいとはっきり言った。

「高岡さん50歳に見えないしあまり、しょぼくれてないんですもん」

「え?そう?」

「公園のベンチに腰掛けてるおじさんみたいに覇気《はき》がないって
感じしませんもん」

「ああ・・・なるほどね・・・でもさ、本当に僕でいいの?」

「はい、よろしくお願いします」

で、どうしてもって言われて一度はおっけ〜はしたんだけど・・・、
これだけの歳の差なら絶対ジェネレーションギャップあると思ったんだ。
世代が違いすぎるから・・・しかも聴く音楽だってまるで違うだろうし・・・。
見るものだって価値観だって違うだろうから付き合ってもうまく行くはずないって思った。

で、よく考えた上で佐藤さんに、藍ちゃんに言ったんだ。

「あのさ、正直に言うと僕はね、僕と付き合ってもいいって女性を探してたってのは事実だから君からの申し出はとっても嬉しいんだけど 」
「君と僕って歳が離れ過ぎてるでしょ?・・・親子くらい離れてるよね、
世間的に見て、どうなのかなって・・・。

「僕が24、5歳くらいの時、君はおぎゃ〜って生まれたんだよ」
「そう考えるとヤバくない?・・・それってマズいでしょ」
「やっぱり無理だよ・・・付き合えないよ」

そしたら・・・

「私のことが嫌いならともかく歳の差のせいで付き合えないって納得
できません」

って、言われた。

「だって私、おじさんしか愛せないんですもん・・・」
「それに高岡さん、私のタイプだって言ったでしょ」

たじろうくらいの彼女のアツ。

僕は、彼女はすこぶる真剣なんだって思った。
半信半疑で、いいかげんな気持ちで彼女に接していた僕は自分を恥じた。
彼女の素直な気持ちをちゃんと受け止めてあげるべきだ。

歳の差・・・いいじゃんもう歳の差なんてどうでも・・・。

「分かった・・・僕が間違ってた・・・」
「自分のことばかり優先して君の気持ちを無視してた・・・ごめん」

でもって彼女、若い男が苦手なんだって・・・。

若いのは、信用できなくて頼りなくて遊ぶことしか考えてなくて、
すぐ浮気はするし人を自分のものみたいに扱うしどうでもいい自分のプライドを傷つけられることがイヤで痛いところを突かれるとすぐにキレるし何を考えてんのか分かんないから・・・避けてる・・・んだそう。

うん・・・的確な分析・・・当たってる気がする。

その点おじさんは、面白いし優しいし、そこそこお金は持ってるし
包容力はあるし、なんてたって経験豊富だから、と・・・。

おじさんが金を持ってると言うのは、それは、かいかぶりな気がするけど・・・。
僕は金などないことだけは自信を持って言えるよ。
ベンツくらいは買えるけどね、ローンで。

それにおじさんにだって、くっだらないダジェレ連発するやついるし、
頑固で気難しくて包容力なんてどこかに捨ててきてるしセックスだって
経験豊富だって言いながら奥さんとレスなおやじ、いっぱいいるよ。

藍ちゃんは23才。
立派に成人してる彼女・・・どんな恋愛したってかまわない。
たしかに、歳の差はいなめないけど交際する事になんの問題もない。
真剣に交際するのなら、そのうえでの性交渉があったとしてもそれもなんの
問題にもならない。
彼女はカマチョでもない・・・ただおじさんの存在がマストなだけ。

ってことで棚ぼた的に僕にめっちゃ若くて可愛い彼女ができたんだ。

ね、捨てる神あれば拾う神でしょ。

その日は昼ごはんを食べて次の土曜日、また会うことを約束して彼女は帰って行った。
彼女がなぜ、若い男がダメで、おじさんがいいのか?

おじさんしか愛せない・・・その意味がこれから分かってくることになる。

つづく。

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