トランプ前大統領のドル安発言について
11月のアメリカ大統領選挙で再選を目指すドナルド・トランプ前大統領がBloombergのインタビューでドル円相場について言及しているので紹介したい。
ドル高と日米関係
2020年の大統領選挙でトランプ氏が敗北してからアメリカと日本の間で起こった重大なことの1つは、円安ドル高である。
ドル円のチャートは次のように推移している。
円側にも原因はあるが、ドル高の理由はインフレによってドルの金利が上がったからであり、インフレの原因は7割方バイデン政権の政策なのだから、当然トランプ氏は文句を言おうとするだろう。
可処分所得とインフレ率を並べれば一目瞭然である。トランプ政権では3回の現金給付を行い、バイデン政権では1回の現金給付を行っている。最初2回の現金給付はコロナで急落していたインフレ率を元に戻し、1%台という適度な水準に見事に戻している。
グラフを見ればインフレは2021年に入ってから2%を超えて上昇していることが分かる。4回目のバイデン氏による巨額の現金給付がその原因であることは間違いないが、その直前に行われているトランプ氏による3回目の現金給付がインフレに貢献していないかどうかはちょっと怪しいところである。
インフレ率が既に戻っていたことを考えれば、7割がバイデン政権側にインフレの責任がある。
トランプ氏は為替相場について次のように言っている。
日本や中国の通貨安(アメリカにとってはドル高)の問題は、アメリカの輸出企業だけの問題ではない。
アメリカの企業にとって、他の国の物価が安ければ、アメリカ国内ではなくそれらの国に工場を作って生産する方が良いということになる。それはトランプ氏の支持基盤であるブルーカラーの労働者にとって雇用の減少につながる。
だからトランプ氏は次のように言う。
ドル高は許容しない
だから円安ドル高はトランプ氏にとって許容できない課題なのである。彼は次のように述べている。
アベノミクスでは割と好きなように円安にしていたように思うが、上にチャートを掲載した通り、強烈なドル円上昇がバイデン政権において起こったのも事実である。
それは投資家にとって何を意味しているか。それはトランプ政権だったらそうしたドル円上昇を許さなかったという意味だろうか。
円安ドル高になっている為替相場についてトランプ氏は次のように言っている。
結論
トランプ氏はドル円の下落を望んでいる。支持基盤から考えてもそれはトランプ氏にとって差し迫った課題のようにも思える。
だが一方で、トランプ氏はこのインタビューでパウエル議長を2026年5月の任期終了まで続投させることを明言している。
パウエル議長がトランプ氏に配慮してドル安政策を取ることはなさそうだから、トランプ氏が本当にドル円を下落させたいならば、もっと緩和的な政策を取る人物を議長にするしかない。
だが少なくとも2026年までトランプ氏はそれをやらないらしい。パウエル氏も利下げをやるつもりだから、それで十分だという判断だろうか。
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