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#インフレ

量的緩和でインフレが起きず、現金給付でインフレが起きた理由

過去40年の金融緩和 アメリカでは1970年代の物価高騰が終わって以来、金融市場の歴史は金融緩和の歴史である。 1970年代の物価高騰を止めるために20%以上に上がったアメリカの政策金利は、その後30年近くかけて低下してきた。以下はアメリカの政策金利のチャートである。 中央銀行は経済が弱るたびに利下げを行い、金融緩和によって実体経済を支えてきた。 だがその金利は2008年のリーマンショックでついにゼロに到達する。中央銀行はこれ以上金利を下げられなくなったが、それでも緩

景気後退寸前で利上げに直面する日本経済、不動産市場の暴落は不可避か

7月31日、日本銀行は金融政策決定会合で政策金利を0.25%に引き上げることを決定した。また、現在行われている国債の買い入れについて、徐々に減額すると発表した。 だから今回論じるのは金融政策よりもむしろ日本の実体経済である。 引き締めを継続するつもりの植田総裁 会合後の記事で報じた通り、日銀の植田総裁は今後も利上げを継続するつもりである。彼は同時に量的緩和の停止にも言及していた。 だが一方で、日本経済は沈みつつある。実質GDP成長率は前期比年率(以下同じ)で次のように

株式市場の暴落はまだ終わっていない

ここ1週間で株式市場は大きく下落し、その後ある程度反発した。日経平均についてはこれまで何度も取り上げているので、今回は米国株のチャートを掲載しよう。 米国株は日本株と同じように、反発中である。株価の反発は本物なのか? 過去数日の株価反発のほとんどは単にアルゴリズム的な投資と、巨大な下落に対する巨大な反動の結果に過ぎない。市場はパニックになっている。ここ数日だけでなくここ1週間、ボラティリティは日足で見ても時間足で見ても天井を突き抜けた。 株価の上下幅の大きさを示すボラテ

2%のインフレ目標は完全に恣意的な数字

2%インフレ目標の謎 少し前まで、人々はインフレが良いものだということを信じていた。インフレと円安を目指すインフレ政策を行なう政治家が当たり前のように当選し、人々はインフレと円安を待ち望んだ。 そして実際にインフレと円安が起こった時、人々は怒り始めた。インフレは実際には物価が上昇するという意味だったからである。 彼らは辞書さえ持っていなかったのだろうか。この件に関して政治家は悪いのか? 彼らは正々堂々とインフレを引き起こすと言っていた。完全にフェアである。流石の私も政治

日銀の緩和政策は持続不可能

莫大な政府債務は問題ないのか? 日本と他国のGDP比政府純債務の水準を比べてみると先進国の数値は、2023年から2024年のもので次のようになっている。 日本: 156% 米国: 96% ユーロ圏: 89% イギリス: 92% しかし政府債務は何故問題なのか? 東京の中心に打ち立てられた巨大な便器は、単に1569億円も要したというだけでなく、誰も使い手がいないこの和式便器は今でも莫大な維持費という赤字(年14億円前後)を垂れ流し続けている。 何度も言うがこの便器

トランプ前大統領のドル安発言について

11月のアメリカ大統領選挙で再選を目指すドナルド・トランプ前大統領がBloombergのインタビューでドル円相場について言及しているので紹介したい。 ドル高と日米関係 2020年の大統領選挙でトランプ氏が敗北してからアメリカと日本の間で起こった重大なことの1つは、円安ドル高である。 ドル円のチャートは次のように推移している。 円側にも原因はあるが、ドル高の理由はインフレによってドルの金利が上がったからであり、インフレの原因は7割方バイデン政権の政策なのだから、当然トラ

アメリカ大統領選を考える

大統領選挙が近づいている。今は6月だからあと半年を切っていることになる。 事前調査ではトランプ氏がリードしており、トランプ氏の勝利を予想する著名投資家も多い。 投資家が考えなければならないのはトランプ氏の経済政策である。トランプ氏が再び大統領になればアメリカ経済はどうなるのか。 トランプ氏のインフレ政策 トランプ氏は、1期目に導入し2025年に失効する所得税減税の恒久化を計画している。この減税は、主に富裕層や中小企業経営者、不動産業界関係者に恩恵がある。また、トランプ

6月FOMC会合結果と今年の利下げ予想はどうなる?

アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は米国時間6月12日に政策決定会合であるFOMC会合の結果を発表し、政策金利を5.25%に維持した。 金利の維持は予定通りだが、最近のインフレ動向にパウエル議長がどう反応するかが投資家に注目されていた。 インフレとFOMC会合 パウエル議長は去年の終盤から利下げをテーブル上に持ち出していた。以来米国株が上がっているのもそれが理由である。 ただ、インフレ率はそれ以来横ばいを続けており、パウエル氏の予想ほどには下落していなかっ

紙幣とゴールドの違い

富の貯蔵手段 誰もが収入を得ており、その一部を貯蓄している。 普段ほとんどの人がそんなことを考えないが、富の貯蔵とはなかなか難しい経済学的テーマである。 良い貨幣とは世界中で受け入れられる富の交換方法であり、同時に良い富の貯蔵方法にもなるもののことである。 世界でもっとも認められた貨幣はドルであり、その次はユーロであり、その次は円であり、その次は人民元である。 こうした貨幣は負債性資産という。つまり、負債に裏書きされている資産である。通貨とは負債なのである。 ほとん

グローバルマクロ戦略の考え方

グローバルマクロ戦略とは、マクロ経済情勢の変化に乗じて、為替、株式、債券、商品などに、買い・売りの両面から仕掛ける投資法である。 ヘッジ・ファンドが用いる戦略は、市場全体の騰落に極力依存せず、様々なリスクをヘッジしてリターンを上げられることで知られている。 いま世界ではインフレ率の上昇が問題となっており、中央銀行はインフレをを回避するため金融引き締めに踏み出した。基本的にインフレの状況下では株式も債券も下落する。 このような状況下では、株式を空売りすることが有効な投資方

日銀が円安を止められない理由

コロナ以後、円安が止まらない。日本でもインフレ率が上がっているが、金利の方はインフレ率ほどの上昇を見せていないからである。 円安と日銀緩和 円安は明らかに日本の家計を蝕んでいる。エネルギーや食料品、プラスチック製品など日本国民が消費するものの多くは輸入依存であり、ドル円の上昇分はそのまま輸入物価の上昇に直結している。 コロナ後にドル円が40%以上も上がったということは、基本的に輸入物価がそれだけ上がったということである。ドル円はそのまま元に戻っていないので、輸入物価もそ

為替介入でドル円が急落したらドル円は買い場

ドル円は長らく上昇している。それは円に対してだけでなく、ドルは様々な通貨に対して広範囲に上昇している. しかしドルは特に円に対して上昇している。その理由は1つにはアメリカがインフレ抑制のために金融引き締めを行なっている一方で、日本が物価上昇にもかかわらず未だに紙幣印刷を行なっているからだろう。 奔放な金融緩和と現金給付の結果、アメリカ経済と米国株は窮地に陥っているのに、嬉々として同じ道のりを後から進もうというのだから日本人の先見性は流石である。 さて、背景はともかくとし

債券とは何か?金利決定要因の計算式とは?

世界の金融市場には株式市場、為替市場、商品市場など様々な市場がある。投資をするうえで避けては通れない分野がある。それは個人投資家に一番馴染みのない債券市場にである。 債券市場は個人投資家に馴染みの薄い市場であるにもかかわらず、グローバルマクロのヘッジファンドが最も重要視する市場である。債券市場とはいわゆる金利を決定するものであり、金利は株価や為替レートなどに影響を与える、金融市場のなかで最も重要な指標だからである。 逆に言えば、多くの個人投資家はプロの投資家が重要視する情