【映画レビュー】ジェネリック『君の名は。』と思うなかれ!『夏へのトンネル、さよならの出口』の感想
夏が終わってほしくないあなたにぜひ行ってほしい映画です。
『夏へのトンネル、さよならの出口』のざっくりとした感想
『夏へのトンネル、さよならの出口』を試写にて観てきました。
八目迷先生の小説「夏へのトンネル、さよならの出口」を『映画大好きポンポさん』のCLAP制作でがアニメーション映画化。あるものを失う代わりに欲しいものが何でも手に入るウラシマトンネルを前にした高校生・塔野カオルと花城あんずのコンビの様子を描きます。
キャストは『蜜蜂と遠雷』の鈴鹿央士さんが主人公カオル役、『いなくなれ、群青』の飯豊まりえさんが転校生あんず役を演じ、『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』の田口智久さんが監督・脚本を担当します。
本作を観てきた感想をざっくり一言で言うと……
秀作!!
“大スペクタクル!”という感じではない一方で、丁寧で真摯で素敵な青春映画となっておりました。かなりオススメしたい一本です。
もう少し、詳しい感想を書いていきます。
ジェネリック『君の名は。』と侮るなかれ
高校生の男女に青空、
不思議な現象、
アーティストがっつりタイアップ
……と、『君の名は。』の大ヒット以降顕著に多く登場している、“『君の名は。』映画”と言える企画なのは間違いないのですが、実際の中身は結構異なる内容。
何でも手に入る代償に時間が犠牲になるウラシマトンネル。それを見つけた高校生男女二人が、その不思議スポットに翻弄されるのでなく、このトンネルに対して何を選択していくのか、という所に焦点を当てるのが良い!
“今”という時間を天秤にかけることができることで、浮かび上がる心情や、その秘密を共有しているが故に深まっていく二人の仲。90分すらない短い尺の中にたくさん観ているこちらの心を掻き乱すドラマが詰まっています。
サイズ感も、テーマも、『君の名は。』とは全く違うので、むしろこの『君の名は。』系の企画が通しやすい今のタイミングでうまく滑り込ませた、良い意味での“なんちゃって『君の名は。』映画”ですよ。
もはや、ややこしいか。
世代的にも懐かしい00年代学生時代
また、この映画はちょうど2005年が舞台となっているだけあって、00年代に学生をやっていた自身にとっても、強烈にブッ刺さる映画だったのが大きいです。
この点についてはムービーナーズさんに寄稿したこちらの記事でも詳しく書いているのですが、MDプレイヤーや折り畳みスマホ全盛期だったりと、あのわずかな時代感がこの映画に再現されていて、強烈に懐かしい。
アイテムもそうなのですが、今でこそオタク趣味的なものが受け入れられるようになっていますが、00年代はまだそこまでだったよなぁ、というあの空気感もしれっと作中に流れていました。
この映画のおかげで、個人的にそれほど印象を強く感じていなかった00年代という時代の空気が、確かに存在していたことを思い出しましたよ。
ルックも素敵!演出や撮影の妙技
ストーリー面だけでなく、ビジュアル面でもしっかり魅せられる映画であることもしっかりお伝えしておきたいです。
個人的にはウラシマトンネル内のややデジタルチックな感じのビジュアルは好みではなく、実は残念に思っていたのですが、むしろウラシマトンネル外のビジュアルがかなり良い!
特にお気に入りは香崎駅のシーン。
作中では何度か登場する大事なスポットなのですが、中盤のあるシーンで急にカメラの位置が切り替わった瞬間に、見えていなかったあるものがグッと視界に広がって入ってくるあの演出……素晴らしいですね。
意外とアニメーションで見ない演出だったので、余計に印象に残りました。
また、本作の撮影監督である星名工さんが、撮影処理のビフォーアフターを自身のTwitterで公開してくれていて、これがまた目から鱗。
印象的なシーンがどう作り上げられていたのか。
撮影処理がない状態の“画”がどういうものなのか。
そういったことが具体的に知れるので、映画を観た人、もしくはこれから観る人にもオススメです。
全体的に“画の見せ方”が面白い映画でもあったわけです。
まとめ
といった感じで、かなり良い。
そしてかなりオススメの映画でした。
残念ながら週末動員数ランキングでは初週末圏外だったようで、大ヒットという感じにはなっていないようですが、このままだと隠れた名作になってしまいそうなのが惜しいです。
後世に再評価されることが全然あり得る映画なので、ぜひファーストランが映画館で観られる今、多くの人に足を運んでほしいです。
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