【映画レビュー】掘り出し物とはこのことか!秀作『熊出没 バック・トゥ・アース大作戦』の感想
おなじみ電影祭にて上映された映画のレビューです。
『熊出没バック・トゥ・アース大作戦』のざっくりとした感想
『熊出没バック・トゥ・アース大作戦』を観てきました。
中国の人気TVアニメシリーズ『熊出没』の劇場版第8弾にして、2022年に上映されたばかりの『熊出没·重返地球』が早くも日本上陸。
『クレヨンしんちゃん』のように毎回テーマが異なる『熊出没』ですが、今回はスペースSF!?熊二が不思議な箱を発見したことをきっかけに、猫型の生命体と遭遇します。
本作を観てきた感想をざっくり一言で言うと……
すンごく良い!!
宇宙モノと思いきや今年はヒーロー映画パロ。
アクション盛りだくさんでありつつ、しっかり泣かせもアリの、笑えて泣けて楽しい見事な娯楽作でした。
ネタバレありのざっくりではなくもっと詳しい感想を書いていきます。
『熊出没』のグラフィックはここまで来たか!
今回、まず何に驚いたかといえばそのグラフィックですよ。
ちょうど2010年代前半に中国に留学していたこともあり、『熊出没』が映画になる前の最初期のTVアニメシリーズを観ていました。そのころを振り返りながら、改めてこうして最新の劇場版を観ると、まぁ、驚くほどに絵の精巧さが増しています。
熊たちの毛並みのある体に、宇宙的な未知の物質や、爆発に爆炎。
全く性質の異なる物質が、リアルなんだけどしっかりディフォルメされた『熊出没』に自然と馴染むように再現されているのが見事!
かつてピクサーが『アーロと少年』で出来ていなかった、ディフォルメキャラクターのリアルな背景への落とし込みに、今作はしっかり成功していると思います。
(かくいうピクサーも『私ときどきレッサーパンダ』では成功していると思いますが。)
『白蛇:縁起』や『雄獅少年』でも驚かされましたが中国の3DCGアニメーション技術、やはりハンパないです。
パロディの極み、ここにあり!
一方で、やはり期になるのは随所で感じる
「これ、どこかで観たことある……」
という印象。
言い逃れできないぐらいにキャラクターの造形や動きに、一目瞭然の元ネタがあるので、人によっては「パクリ」と切り捨てられてもおかしくないラインを踏んでいる映画なのでしょう。
ただ、まんまコピーするのではなくしっかりアレンジを効かせているので、個人的にはパロディの範疇と解釈することにしました。
なんと言っても、そのアレンジでしっかり面白くできてるから許せる。
今作のゲストキャラクターであるアブちゃんは戦闘形態の見た目もギミックも動きまでもがブラックパンサーすぎるんだけど、小柄な体型というギャップが新鮮で、CGの出来も凄まじいので見応えがある。
アブちゃんに関してはまた生身時の悪猫感がまた良くて。ぜひこのスタッフで『サイボーグクロちゃん』を作って欲しい、とクロちゃんファンとしては思います。
今回のヴィランである巨漢のバッキーみたいなやつと、グリーンゴブリンみたいなマシンに乗ったお姉さんも最高で、コミカルなシーンにも馴染めるデザインなんだけど、戦いのシーンになるとしっかりカッコいいのがたまらないです。
ただ、唯一「誰かに呼ばれて振り返るところで映画を締める“ヒーローイズバック”のやつ」そろそろ飽きて欲しい。中国アニメーション映画あるある。
笑えて泣けて熱いエンターテイメント作品
そして抜け目ないのが、ストーリーですよ。
熊二の成長劇として、ラストまで“なかなか反省しない憎たらしいやつ”としてギャグ的に消化していくのですが、それをしっかり伏線として、最後の最後のここぞ、という場面で熊二についに自身を省みさせるのが憎いし、熱い!
しかも、ラストでまさかのヴィラン側にもしっかりドラマを用意しているのがさらに憎い。散々、ギャグキャラクターだったと思っていたヴィラン側にもしっかり真面目な背景があって、そんな人たちにも手を差し伸べる結末には思わず涙させられてしまいました。
兵器だったり、侵略だったり。
今の中国がこれを出すんだ……という違和感はありつつも、むしろこういう作品が出てくるのは、中国の将来的にも良いことなんじゃないかと、ぼんやり思います。
まとめ
というわけで、
「なんか見たことある」をパロディやオマージュと割り切れば、ほんとシリーズでもベスト級に好きなやつでした。
中国アニメ映画の現在を知れる一本。
オススメしたいけど、次の上映はいつになるやら。
次回上映の際は、ぜひ見逃さないようにしてくださいませ。
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