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【映画レビュー】『ロン僕のポンコツ・ボット』の感想!この映画で友達を学ぶのか、スマホとの距離感を学ぶのか。

公開日当日に行ってまいりましたよ。

『ロン 僕のポンコツ・ボット』のざっくりとした感想

『ロン 僕のポンコツ・ボット』を大阪・なんばパークスシネマで観てきましたよ。大阪難波周辺では、TOHOシネマズ、なんばパークス、シアタス心斎橋の超至近距離の3シネコン全部で『ロン』の上映を実施する異常事態となっていました。供給過多すぎるよ!

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ロン 僕のポンコツ・ボット
(原題:Ron's Gone Wrong)
制作年:2021年 / 制作国:アメリカ
監督:ジャン=フィリップ・バイン、サラ・スミス

最新式ロボット型デバイスと友達のいない少年の物語を描いた3DCGアニメ。ディズニー作品ではありながらも、20世紀スタジオサイドのアニメということで、立ち位置としてはちょっと特殊な一本。玩具なども出ているようなので、捨て企画ではないはずですが、出来やいかに。

監督のジャン・フィリップ・ヴァインさんの他、個人的に大傑作に思っている『アーサー・クリスマスの大冒険』のサラ・スミスさんが監督・脚本、ピーター・ベイナムさんが脚本に名を連ねているところも注目です。

割と楽しみに行ってみたのですが、観てきた感想をざっくり一言で言うと

惜しい

という、なんとも言えない微妙な映画でした。
詳しい感想を書いてまいります。
結末などネタバレとなる内容にも踏み込んじゃうのでご注意を。

『ロン 僕のポンコツ・ボット』が描くのは友達か?

本作の主人公・バーニーは、学校でも浮いていて、友達のいない男の子。
そんなバーニーに友達がいない大きな理由の一つが、流行のガジェット・Bボットを持っていないこと。そんなバーニーのために、親が非正規で手に入れた故障品のBボットをプレゼントするのですが、このBボットが自分勝手に動き出すことをきっかけに事件が起こっていく物語です。

あらすじはベタかもしれないけど全然面白くなりそうで、結構ワクワクしながら観ていたのですが、正直ちょっと爪が甘い......。

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まず、バーニーに友達が居ない理由が、本当にBボットを持っていないから、とか、家柄がやけに癖が強いとか、過去に友達を呼んだパーティーで事件を起こしたとかぐらいで、本人にそこまでの致命的な課題があるわけじゃなく、普通に学校の同級生とコミュニケーションも取れていたりとそこまで危機感を感じないのですよ。そうなってくるとバーニーの課題がマジで流行り物を持っているか、持っていないかレベルの話なところにテーマが矮小化してしまう感じがして勿体無かったです。

バーニーがこの物語で得た教訓とは?

この映画、主人公のバーニーがロンとの出会いで得た教訓といえば......

受動的じゃなくてもっと能動的になろう!

とか

自分の言いなりにならないからこそ、友達って面白いよね!

といったものでメッセージ自体はすごい素敵なんだけど、そこに主人公たちが気づくまでのプロセスがうまくドラマに伴ってもいないし、なんならラストにロンのデータをみんなに強制的にインストールさせようって着地になるのは、正直独善的な考えにも思えて、少し嫌に感じるぐらいの按配でした。

Bボットって自分の思い通りになる友達のメタファーでありながら、そのままツールとして“スマホ”にも置き換えられるような存在で、この二重の掛け方がうまくいってない。

もしツールとして扱うなら変に友達扱いするのも違わないか?とも思うし、ツールにさえ魂が宿ったような存在として想像力を働かせてしまう人間ってちょっと浅はかだけど愛おしいよね?ぐらいの話なのかと思ったら、じゃあそのツールを自分勝手に上書きするのって乱暴だよね?って話になるしで、設定のメッセージの噛み合わなさから、この映画って結局何を言いたかったんだろうになっちゃう気がするのですよ。結局スマホとの距離感を学ぼうぐらいに落ち着いちゃうのがすごく惜しいです。

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それを考えると『ベイマックス』なんかは友達すぎず、かといってそこへの愛着を卑下もしない、絶妙なチューニングだったんだなぁと強く感じます。

MAD素材にされてしまうといったデジタルタトゥーはどう足掻いても消えないし、配信を見てもらえないのは、コンテンツが面白くないだけ。
ロンのデータをインストールして友達ができれば万事解決みたいなのは、解決の仕方ざっくりさせすぎだよ!

良い子じゃないロンの傍若無人ぶりは最高!

......といったテーマとかメッセージとかをつつきだすと色々文句は出てきてしまうのですが、そういうところは置いといて見ていく分には、すごく楽しかったですね。

中でも、中途半端にバグったロンの傍若無人ぶりは、予告編などで分かってはいてもやはり爽快

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序盤の『お前を壊してやる』と唱えながら首もぎマシーンになるシーンとか、悪趣味で最高。「ディズニーがこれをやるか?」ぐらいの感じだったので、ディズニーやPIXARができないラインを攻めたファミリー映画として、全然有りだと思えました。

『ロン 僕のポンコツ・ボット』を制作するロックスミスアニメーションにとっては、今作が初の長編アニメーション作品。新たな勢力として、ロックスミスの色をどんどん出していってほしいです。

ロックスミスアニメーションについては以下参照。↓

あと、エンドロールが今年上位に来るレベルで可愛くて好きでした。
今年ベストエンドロール候補の一つです。


完璧な映画とは言えない仕上がりでしたが、人間の肌のシミの感じなど、3DCGのレベルも高く、ディズニーやピクサー、ドリームワークスといった会社でなくてもこのレベルの質感は出せるんだ、という意味でも十分なクオリティ。日本のアニメーション映画界が充実して欲しい身としては今作を上映してくれたことに感謝です。

今後、ロックスミスアニメーションがどんなアニメーションを作っていくのかはわかりませんが、ぜひディズニーたちが作らないようなあっと驚く“不良”な映画を期待したいところです。

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