【映画レビュー】忍者だけに隠れた名作?『リトルニンジャ市松模様の逆襲』の感想
ほとんどの人に知れられることなく、日本上陸しているビデオスルー映画というものが現在も多くありまして、その中にはアニメーション映画もやはり存在します。
そんな中でも隠れた名作というのは存在するもので、今回はそんな一本を紹介したい!
『リトルニンジャ市松模様の逆襲』とは
隠れた名作……それは『リトルニンジャ 市松模様の逆襲』だ!
『リトルニンジャ 市松模様の逆襲』は2018年年末に海外で公開された3DCGアニメーション映画。製作を担当したのは、デンマークのアニメーション製作会社であるA.フィルムプロダクションや、POP UP プロダクション、Sudoku ApSらです。監督を務めたのは、デンマークでコメディアンや俳優としても活躍するアンダース・マテセン氏と、結構なバイオレンスなアニメーション映画『Ronal Barbaren』を監督したソービョルン・クリストファーセン氏のお二人。
公開時には、当時のデンマーク映画としては最高のオープニング記録を残すほどのヒット作となり、あらゆる分野でデンマークのその年を代表するものを表彰するズールー賞でも、2019年の映画部門を受賞しています。
そんな大ヒット作でありながら、やはり海外作品の日本興行は難しいもので、残念ながら日本へは2021年にビデオスルーという形で上陸。邦題にも当時の大流行作である『鬼滅の刃』に無理にでも便乗しようと“市松模様”なんてワードをねじ込んでいるあたりが切ないです。
そんな『リトルニンジャ市松模様の逆襲』が2022年5月よりU-NEXTにて、見放題枠で配信をスタートしたということで、以前よりも見やすくなった今こそ多くの人に見てもらいたいということで、今回ご紹介させていただきました。
この映画……ゲテモノかと思いきや、まさかの秀作なのですよ!
あらすじからすでに攻めてる!?ニンジャの誕生
この映画、タイのぬいぐるみ工場から物語が始まります。
さびれた工場で虚ろな目をした子供たちが、ひたすらにぬいぐるみを生産し続け、大人たちはそれを厳しく監視しています。経営者の通訳としてやってきた青年がその様子を見て、犯罪だと止めても「わたしがやらなければ、誰かがやる」と言って聞く耳を持ちません。
挙げ句の果てには、うっかりこの経営者のスカーフを、ぬいぐるみの生地として使ってしまった子供が、激しい暴力によって死亡(!)。それにより、子どもたちを守るべく古の忍者・タイコウナカムラの魂がぬいぐるみに宿り、経営者を殺そうとする……という導入となっています。
海外ではアニメーションといえば子ども向け意識がまだ強い国も多い中、スタートからかなり攻めた内容となっているところが『リトルニンジャ』の面白い部分。労働搾取される子どもの無念を晴らそうと、忍者の人形が殺しにやってくる……って子ども向けにしてはなかなかのハードです。
武闘派『ドラえもん』冴えない少年を救う
そんな殺意の衝動で目覚めた忍者人形は、経営者が落としたクレジットカードを頼りにはるばる海を渡って、さえない少年アレックスの手に渡ってきます。
忍者人形はカードの字が読めないので、アレックスの手を借りて、経営者にカードを返すと嘘をつき、協力関係を求めます。乗り気じゃないアレックスでしたが、意中の女の子といい関係にさせてもらったり、いじめっ子を懲らしめたりと、忍者人形のアドバイスや特訓によってすっかりみんなの人気者になっていきます。
殺しの映画かと思いきや、物語はいわゆる『ドラえもん』的なダメダメな主人公の元にマスコットがやってきて、事態を好転させる働きをしてくれるというタイプの作品です。
ただ、この『リトルニンジャ』の面白いところは、秘密道具とか忍術といったものではなく、もっと地に足のついたアドバイスで事態を解決に導いていくところにあります。不思議な力のようなファンタジーはなしに、アレックスくんのダメダメぶりを改善していく姿が、痛快かつ新鮮です。
悪を殺してもいいのか!?アレックスvs忍者人形
すっかり仲が良くなったかと思えたアレックスと忍者人形でしたが、あるタイミングで実は忍者人形が、経営者を殺そうとしていることが明らかになります。ここでアレックスは、猛反対。決裂する二人は「殺す」「殺さない」で争いあうことになります。
導入からしておかしかったですが、やはり「殺す」「殺さない」で揉めることになるキッズ映画ってなかなかないですよ。というか、ルックこそ子ども向けですが、この映画はしっかり大人も楽しめるようなPIXAR映画みたいな意識が根底にありますよね。
この争いの結果、アレックスと忍者人形がある手段を取るということで和解するのですが、この解決案がこれまたすごい!ぜひ映画本編を見て欲しいのですが、トンでもない方法でアレックスと忍者人形は、経営者と相対することになります。
「自分がやらなくても、誰かがやる」
そして見事なのはオチのつけ方。
最後に“マーベル”って出てもいいような、これまた驚きかつ良いラストが用意されています。
この映画、実は冒頭で経営者が使っていた「自分がやらなくても、誰かがやっている」という悪行の言い訳がテーマの一つにもなっていて、このフレーズに対してアレックスが一つの回答を見せるんですよね。
やや唐突ではあるものの、この映画が自責と他責を描く作品だったのだな、と分かる作りになっており、冒頭の工場で働く子どもたちの姿もいたずらに設定したのではないだろうな、という確信が生まれる良い映画でした。
まとめ
そんなわけで、『リトルニンジャ 市松模様の逆襲』はこんな映画。
着地など賛否はあるでしょうが、むしろそんな語りがいのある作品でした。デンマークのアニメーション映画侮りがたし!
とんでもない秀作映画です。
ちなみにそんな『リトルニンジャ市松模様の逆襲』は昨年『2』が公開。
私はすっごく楽しみなのですが、この機会に一緒に楽しみにしてくれる日本の方が一人でも多く増えてくれたら嬉しいです。
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