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【映画レビュー】もしかしての大傑作を期待しつつも“それなり”だった『神在月のこども』の感想

意外と前評判が良かったので、期待して観に行った映画の感想です。

アニメーション映画『神在月のこども』とは

アニメ映画『神在月のこども』を初日に、大阪・ステーションシティシネマに観に行きましたよ。

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神在月のこども
制作年:2021年 / 制作国:日本
アニメーション監督:白井孝奈
コミュニケーション監督:四戸俊成

出雲地方を舞台に神様を題材にしたファンタジーアニメ。日本神話がベースとなっており宗教映画感も感じますが、神道って経典なかったり、布教とかしない、ちょっと特殊な世界なんですよね。

監督を務めるのは『おおかみこどもの雨と雪』『かぐや姫の物語』などの作画を手掛けた白井孝奈さん、そして脚本は龍田哲郎さんと三宅隆太さん(!)。スーパーバイザーには『名探偵コナン』の諏訪道彦さんの名前も。内容的にも布陣的にも要注目の一本です。
そして原作・脚本・コミュニケーション監督という謎の立ち位置に君臨する四戸俊成さんって一体何者なんだよ。

意外と試写を観た人の反応が良かったようなので、期待して観に行ってきたのですが、私が本作を観てきた感想をざっくり一言で言うと

優良作。

ぐらいの、とびっきり突き出るほどの魅力は感じないまでも、見所がぼちぼちある感じの映画でした。

もっと詳しい感想を書いていきます。

まさかの東京→出雲間の神社経由マラソン!

本作のストーリーをざっくり紹介すると、
母を亡くした傷がまだ癒えてない主人公の女の子・カンナが、
まさかの東京→出雲間の神社経由マラソンに挑むというお話。

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亡くなったお母さんが、韋駄天の末裔で半ば強引に、カンナは東京から神社をめぐりながら出雲まで1日(!)で走らせられます。かわいそう。ただし、カンナには母の形見の勾玉の効果で、降り注ぐ雨が宙に浮かんでいるように見えるほど、時間の流れを遅くすることができるので、時間の猶予はあるという仕掛けとなっています。それでも酷なんですけどね。

主人公に長時間のマラソンを強いれるということで、この勾玉が舞台装置として上手いポイントではありました。そんなわけでこの映画のテーマは“走る”こと。母との思い出と重なるこの“走る”というアクションに、カンナがどう向き合うのかが描かれる映画となっています。

女の子にめっちゃ走らせる映画でした。この映画のテーマは“走る”こと。

“走る”姿に正直言いたいことはあり!

この“走る”に関して、諸々が吹っ切れた後のクライマックスのカタルシスだとか上手い部分もあるんですが、個人的にはちょっと惜しい、というのが正直な感想。

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“走りたいのに走れない”なのか“走りたくないのに無理をして走っている”のかを主人公自身が自覚していない曖昧さが、そのまま物語の煩わしさに感じられ、肝心のクライマックスに至るまでの推進力が弱かったのが辛かったです。

あと、せっかく長距離を走らせているのに、
どれくらい遠いのか、今どれくらい走ったのか、
これが直感的にわからないのがもったいない。

神様の姿や貢物も多様で、神道に対する興味が湧くという意味でも魅力的なだけに、中継地である神社がどの辺にある神社なのか作中で分かるようにしてくれたり、地図などで定期的に今どこを走ってるのか示してくれた方が活きたように思います。

もっと“走る”ことの気持ち良さが観客にも伝わるようにして欲しかった。

画期的な背景を動かさなくて良いシステム

時がすごくゆっくり進むという仕掛けがアニメーション的にもうまいこと省エネに働いているのも画期的!

作中のほとんどの時間、時が止まっているので、背景の絵が動いていなくても成立するというのはある意味、アニメ制作における省エネ的役割を担っています。背景の人物も物体も動かさなくて済む設定って描く側にはありがたいよね。

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ただ観ている側からすると正直ちょっと手抜きにも観えてしまったり。

クライマックスの手前の海岸のシーンなんか、たき木の火が停止したままだったので「あれ!?アニメーション事故ってない?」と一瞬心配になりましたよ。冷静になって、火も時間が遅くなっているから良いのか、って気づきましたが、じゃあどうやって火をつけたんだよ、って謎は深まったり。

たまたまたき木があったのかな?とか思ったらその後のシーンで、火が突如消えたりするし、韋駄天の時間システム、制作陣に都合良いよな。

時間がゆっくり進む設定が面白いけど手抜きっぽく観えちゃう。

驚愕のなんちゃって「グランドエスケープ」

そして、忘れちゃいけないのが肝心のフィナーレシーン。
とても気持ち良い大詰めが描かれているのが、このシーンにも大きな問題が。

フィナーレでは、この映画の挿入歌・主題歌を一通り担当するmiwaさんの『神無-KANNA-』という曲が流れるんですが、これが『天気の子』の挿入歌「グランドエスケープ」味が強すぎる!

ちょっと聞いてみてよ。

サビ前のフレーズや、三浦透子さんとmiwaさんの澄んだ声色が類似していること、手拍子やピアノの印象的な組み合わせなんかが絶妙に「グランドエスケープ」をチラつかせてきて普通にノイズ!パロディギャグみたいになっちゃってるのが惜しすぎます。

挿入歌がRADWIMPSの『グランドエスケープ feat.三浦透子』っぽい

まとめ

以上、今作の感想をポイントでまとめるとこんな感じ。

●女の子にめっちゃ走らせる映画でした。この映画のテーマは“走る”こと。
●もっと“走る”ことの気持ち良さが観客にも伝わるようにして欲しかった。
●時間がゆっくり進む設定が面白いけど手抜きっぽく観えちゃう。
●挿入歌がRADWIMPSの『グランドエスケープ feat.三浦透子』っぽい

光る部分はしっかりとあるんだけど、随所の気になるところや惜しいところが目立つ、そんな映画でした。

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