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【映画レビュー】『岬のマヨイガ』の感想!東日本大震災との難しい距離感を結ぶバランス感とは?

一通りの上映が終わった後の更新になって申し訳ないんですが、書きますよ。

『岬のマヨイガ』のざっくりとした感想

『岬のマヨイガ』を観てきました。
記事化も遅かったのですが、観にいったのも公開から3週間ぐらい経った後だったので、上映回もかなり限られているようなタイミングで滑り込んできました。

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岬のマヨイガ
制作年:2021年 / 制作国:日本
監督:川面真也

『のんのんびより』の、監督・川面真也さん&脚本・吉田玲子さんのタッグで描く、柏葉幸子さんの同名原作作品をアニメーション映画化。“ずっとおうえん。プロジェクト”の劇場公開作品としては今作が最初の作品となっています。主人公のユイ役を務めるのは芦田愛菜だよ。(声色を変えて)

こっちは予習記事↓

“ずっとおうえん。プロジェクト”についてはこちらで前紹介してますね。↓

本作を観てきた感想をざっくり一言で言うと、

佳作

という感じで良い作品でしたよ。

結構良い感じなのに間をあけて紹介するなよ、って感じではありますが、今後VOD配信などもあるかもしれないので、あえて感想を書かせていただきます。

以下詳しい感想を書いていきます。

東日本大震災との難しい距離感

東日本大震災に対する「ずっとおうえん。プロジェクト」の一環ということで、本作の舞台は東日本大震災の被災地。暴力的な父親から逃げ出してきた17歳のユイと、交通事故で両親を失った8歳のひよりが、被災地で出会ったキワおばあちゃんに迎え入れられ、共同生活を送るという物語となっています。

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今作では、ユイは父親に対するトラウマ、そしてひよりは両親が亡くなったことへのトラウマ、そして被災地から遠く離れていった友人に忘れられそうになることへのショック、そして孤独を感じていた面々が家族を見つけていく......などなどいろんな課題やメッセージが描かれています。

見事だと思うのは、癒えきらない面と忘却されていく面をバランスよく描いているところ。あの大地震・大津波から10年という時が経って、現地では現在進行形でまだまだ復興できていない状況の中、遠方の人にとっては遠い過去の出来事のように受け取られてしまうタイミングで、その絶妙な状況下にある東北の姿を描いているのが面白いです。

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正直まだセンシティブな内容であるからこそ、ユイやひよりのドラマに関して割とシリアスになりかねない展開でも、穏やかな音楽が流れたりと重くなりすぎないような調整がされていて、気をつけてバランスを取ろうとしているな、と感じました。

その調整のせいか、クライマックスがあっさりしすぎているのは否めないのですが、震災から10年という時期的にはしょうがないでしょう。むしろ、家庭内暴力や事故で親を亡くすといったテーマは、子供も見るようなことを想定した作品としては踏み込んだ内容と言って良いでしょう。

妖怪......なる“ふしぎっと”たちの役割

そんな“過去”や“忘却”というテーマを、より際立たせてくれるこの映画のエッセンスとなっているのが、本作で登場する古くから伝わる妖怪や神々、そして本作のクライマックスの伝承です。

彼らの存在のおかげで、「忘れないでいこうよ」というメッセージと「かつてのものが今にも残っていく」ようなポジティブなエネルギーにも繋がっていくようになっています

単純に設定として見せるだけでなく、これをまた攻めた作画アニメーションで見せるのが本作のすごいところ

うまいことこの昔話パートの作画をクライマックスに持って来れれば、画的に盛り上げることができたんじゃないかという気にはなるのですが、日本昔話的にパッケージングしたかった感じですかね。絵的には完全に喰われている気はしますが、ないよりは全然マシです。

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あと気になるのが“ふしぎっと”というこの映画独自の名称。妖怪とかそういう表現で良い気がするけど、なんでよりによってたまごっちみたいなネーミングにしたんだろうという違和感は残ります。
しばらく“ふしぎっと”という名称は擦ってやろう。

特殊な上映形態にびっくり

そして映画とは関係ないのですが、特殊な上映形態にも驚かされたり。

私が観たTOHOシネマズなんばでは、すでに平日朝一の回しかなかったぐらいのタイミングで足を運んだのですが、ちょうど限定3日間の日本語字幕付き上映に当たってしまいました。普通のシネコンでもこんな上映あるんですね。

洋画は吹替を率先して選ぶ派の私は「字幕邪魔だなぁ」という体験になってしまったのが惜しいとはいえ、字幕を必要としてる方々には、いつも逆に思われてるのでしょう。あまり聞こえにくい人や、日本語の聞き取りに慣れてない海外の方などには、ありがたい試みですよね。

そういえば、中国に住んでいたころ、映画にはかなりの高確率で、吹き替え版であろうとも中国語字幕が添えられていました。中国語慣れしていない自分にとってはかなり助かった記憶があるので、吹き替え版であっても実際はもっと字幕回を増やした方が、嬉しいお客さんも多いのかもしれないですね。

字幕邪魔派の私にとっては悩ましいところですが。


以上、そんな感じで、課題も感じる映画ではありながらも、メッセージにも感動できたし、挑戦意欲も感じられた、良い映画でした。興行的にあまり目立った活躍ができていないのが惜しいぐらいなのですが、届けられるべき人に届いて欲しい映画ではあります。

見逃した人もスンペズンナ。
2022年2月2日にディスクリリースが決定しておりますよ。

22.2.2で覚えやすいネ。

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