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アフターダークを読みました

ブラックコーヒーのような、豊かで静かな液体でした。

村上春樹、ねじまき鳥クロニクルは昔に読んだ記憶がある。どんな文章だったっけな、すっかり思い出せないです。 (1


この本は鞄に入れっぱなしになっていました。
一冊は小説を持ち物に加えておく習慣があり、電車の中や待ち時間で読んだりしていたのですが、こんなご時世だから読み終わるのに半年はかかりました。

時間が経ったコーヒーは酸化して飲めたものではなくなってしまいます。
しかしアフターダークは文字情報のため、鞄にいれっぱなしでも、いつでも新鮮で豊かな気分にさせてくれました。
文章が明瞭かつ簡潔で、久しぶりに本を開いても、すぐに豊かな夜の世界へ連れていってくれる力強さのおかげです。

本作はダークの名の通り、とある夜を舞台にした群像ドラマです。
様々な事情を抱えた人達が眠れない夜を生きていて、その人生がすれ違ったり、ちょっとくっついたりします。

夜の空気っていいですよね。

自分も無性に夜に徘徊したくなるときがあります。寝れないまま徘徊したことも、早起きしすぎて太陽より先に動き出したこともあります。

その時に感じた空気の重たさと、風景がそこに存在している感覚が、アフターダークでは文章として伝わってきました。
いいなあ、こんな文章が染み出してくる人間になりたいと思いました。
なので、短くて明瞭な文章を書こうと絶賛意識中です。でも、森見登美彦が好きです。

話は戻って、夜の空気の重たさと静かさは、水に潜っている感覚に似ています。
冷たくて静かで、孤独な気分になります。でも、どこか心地よいです。
夜の闇が自分と周囲を曖昧にしてくれるので、夜に溶け込んで、個の輪郭をぼかしてくれるからだと思います。

この作品に出ている人達もどこか孤独をちらつかせています。彼ら彼女らが抱えている様々な事情をすべて汲み取ることはできないですが、夜の静かさと曖昧さによって、少し溶け出して混ざるように、個の交流が描かれるのが印象的でした。

夜を通して、なにかが変わったのか、もしくは変わらなかったのか。
夜が溶け出した液体をちびちびと楽しみたい人に、ぜひ読んでもらいたい作品です。

僕は最後のさんくち分くらいを夜に一気に飲み干しました。
夜にこの作品を読んだのは今日が初めてかもしれないですね。

余談ですが、作品に手を伸ばすきっかけはアジカンのアフターダークからですが、更に辿っていくとVTuberグループであるアイドル部のBLEACH OPのMADで再燃しました。
かっこいいときれいが同居しているものが好きです。

もう2年前の動画か……文庫本を買ったのが本当に半年前か怪しくなってきました。まあまあいいじゃないですか。名作はいつ楽しんでも名作なので。


追記1:正しくは世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランドでした。深夜の無添削文章ってこわい


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