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ReDesigner for Student ブランドポスターができるまで

東京都立大学インダストリアルアート学科3年の6人で設立したデザインチームneighby(ネイビー)で、ReDesigner for Studentのブランドポスターとコピーライティングを制作させていただきました。
ここにその記録を残しておこうと思います。

デザイナー就活

ReDesigner for Studentとは、デザイナーを目指す学生向けの就活プラットフォームです。自分のデザイン作品を登録すると、他の学生の作品が見られたり企業とマッチングしたりします。そのほか、ポートフォリオの作り方などが学べるイベントなど就活に留まらない活動をされています。
https://student.redesigner.jp

ReDesigner for Studentの方からお話をいただいた後、まず初めにReDesigner for Studentとはどのようなブランドで何を目指しているのか、というヒアリングから制作は始まります。
そこで、ReDesigner for Studentというブランドの特徴を踏まえ、チームでまとめたポスター表現の方向性が次のようなものでした。

つくったデザインが就活につながってゆく

ReDesigner for Studentは新卒でデザイナーになりたいユーザー向けのプラットフォームですが、単に求人がたくさん載っていて便利なサイトというだけでなく、もっと広く「デザインをつくること」「デザイナーとして働くこと」それ自体と向き合えるようなイベントやコンテンツがたくさんあります。なのでポスターも、就活というテーマをアピールするのではなく、もっと広く「つくる・働く」ということから発想して制作しようとチームで決めました。

まずは登録だけでもしてみたら?ぐらいの感じ

これは自分自身も就活生の身なので痛いほどわかるのですが、就活を始めるって結構大きな決断だと思います。怖そうだし、面倒くさそうだし、周りもすごそうだし、と二の足を踏んでしまう気持ちが自分にもありました。特にこのポスターが貼られる予定のキャリアセンターは、学生によっては遠い存在の人もいると思います。
それを踏まえてあまり大げさにアピールするポスターではなく、まずは登録だけでもしてみたら?という気張らないメッセージを表現することにしました。

ラフの作成

ここから実際の表現を決めていきます。

謎の絵をたくさん描きます

まずは落書きのようなものから始まり…

6人で付箋を貼ってゆく

ラフとして起こしたものにチームで意見を出し合い、ビジュアル表現とストラテジーを一緒に進めていきます。

そうして出来た最初のラフがこちら。気軽に就活への第一歩を踏み出すイメージを、フォークでパクッと一口食べる様子で例えました。そしてそれがケーキの上のイチゴのように特別でとっておきのものになってほしいというコンセプトです。
就活では様々な企業の情報を冷静で客観的に比べていかなければいけない場面も多くありますが、ケーキを見て直感的においしそう!と感じるような、「こういう仕事がしてみたい!」「こういう自分になってみたい!」と思える出会いが生まれたらいいな、という願いを込めました。

しかし、このラフには通常禁止されているロゴの改変を行っていること、そしてコピーが入っていないとおそらく成立しないことという2つの課題がありました。

ここから長い戦いが始まります。

こちらは同じくneighbyのデザイナー森さんの作

もっと色々な食べ物でやってみたり、

ショートケーキを食べながらショートケーキの3Dモデルを作ってみたりします。

neighbyデザイナー西村作

また第二案としてあった花をモチーフにした案も同時に検討しました。

コピーを書く

それと同時にコピーも決めていかなければなりません。

コピーを考えるにあたって今の就活サイトや就活エージェントを行なっている企業の広告クリエイティブをリサーチすると、特にSNS広告において「就活が不安→なら、うちのサービスへ」「就活が嫌だ?→なら、うちのサービスで早く終わらせて遊ぼう」という動線を描きがちであると分かりました。
しかしそれらの中には必要以上に就活生の不安を煽るような表現があるものもあり、ブランド側の課題解決にはなっていても、学生側の「良い就活」を実現することにつながらないようなものも見受けられます。
今回のポスターでは、「これで就活を逃げ切ろう!」ということを表現したいのではなく、「その先にずっと続いてゆく、デザイナーとして働くこと」のきっかけを作るにあたって学生の背中をそっと押すことを目指しています。それを考えて、実際に就活生と面談を行なっているReDesigner for Studentのキャリアデザイナーの田口さんからのアイデアもいただきながら「はたらく、のひと口目。」というコピーを書きました。

さて、そうと決まればあとはケーキを描くのみ、なのですがここからが長かった

ケーキとの戦い

これは最初からわかっていたことなのですが、ショートケーキというモチーフは古今東西いろいろなグラフィックデザイナーが取り組んでいます。neighbyのコンセプトは新たな視覚表現の研究の場、なので誰とも違う新しいショートケーキを描かなければなりません。

毎晩かならず一つ新しい方法でショートケーキを描いてから寝る生活が始まりました。

時には3Dでイチゴだけ作ったり、

時には手書きで描き、

それをもとにIllustratorに取り込んで新しい線を研究したり、

クリームのたっぷりした感じが伝わる線を研究したり、

そのためにショートケーキ特集の雑誌Hanakoを読み込んだり。

次第に僕はショートケーキとは何か、というショートケーキの実存について考え始めます。

そんな中、いつものようにneighbyの6人で眠い目をこすりながらショートケーキに頭を抱えていた時、メンバーの森さんが「これ逆にケーキ白抜きにしたらどうなんだろう?」と呟きました。

あらゆる線を研究した結果、線が消えた瞬間です。

そして、ここまで出てきた表現を出力して比較します。
印刷しては貼り合わせてを繰り返し、

その場で余白や文字詰めなどを追い込んでいきます。

この時点でほぼ完成系のものはできており、あとは微調整だけして入稿のつもりでした。

しかしまだ全体的に垢抜けないというか、グラフィックとして美しくない感じがあり、最後の最後まで追い込みをかけます。

印刷→貼り合わせ→比較を繰り返す

アート学科のフロアにいた先輩や教授に「これってケーキに見えますか?」と聞いてまわりながら、最終プレゼンの直前まで追い込んで出来たのがこちらのポスター。

特にこだわったのは文字組みで、文字の間にある空気の流れを操るような感覚で組み、場の空気感を表現しました。

こちらのポスターは全国の色々な大学に送らせていただける予定です。ぜひ探してみてください。

文:望月良輔(チーフデザイナー)


neighby

www.neighby.jp
neighbyは6人で結成されたデザインチームです。視覚表現の可能性を研究する場として、作品を望む人の気持ちをくみとりグラフィックデザインの前衛を張ることを目指します。
 Mail : info@neighby.jp


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