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漆の樹液(下)

             (上の写真は広辞苑の一部)


3,漆漉(こ)し


この状態でも細かいゴミが混ざっているため、今度はこします。
縄文時代後期の中山遺跡(秋田県五城目町)では、漆を漉しすためひねった形のままの布が発掘されています。縄文時代の布の多くは、このような漆漉し布として発見されているので、縄文時代前期の布の出土も期待できるのだとか。

江戸時代半ば頃からは紙が普及してきて、紙で漆をこすようになりました。

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上の写真は漆こしの木製道具。左下にドンブリに入った漆、右は漆をこすたっぷりの白い紙の束


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紙の束にドンブリの漆をあける。


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紙をねじると、漆がポタポタ… 一見コーヒーキャンデイのよう                          紙が平らになるまでじわじわと取っ手を回し漉していく



4,いろんな漆


前回も少し触れましたが、技法や用途に応じ色々な漆が使われています
ほんの一例ですが、漆の幹から採取された樹液は荒味漆で、大きなゴミをのぞいただけの漆を生漆(キウルシ)といいます。生漆は下地に使ったり、木目を見せる拭き漆として塗っていきます。


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また、顔料などが加えられることもあります。写真は私が使用している漆の一部ですが、左は朱の顔料の入った色漆、真ん中は黒漆、右は素グロメ漆です。普段は用心のため漆名のメモを乗せています。


ざっくりと書きましたが、分かりづらかったら、申し訳ありません。



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   〈3時のお茶〉 日差しは明るく、根来盆の上にも春が訪れました。



民 話  木龍うるし、龍の淵


そう言えば、「木龍うるし」「龍の淵」など昔話があり、かつて漆の木は身近だったのでしょう。東北では、漆の実から和ろうそくを作っていたそうです。

ところが、明治期になると殖産興業が掲げられ、外貨を稼げる絹織物のため養蚕が盛んになり、漆が切られ桑の木が植えられていったのです。
(以来、不足する漆を、中国から輸入するようになりました。けれど、近年は町おこしなどで、再び漆の植樹が行われるようになってきています)

二つの童話の内容はよく似ていて、ある兄弟の話です。兄はある淵に潜って漆が溜まっているのを見つけましたが、弟に取られまいと木で龍を彫り淵に沈めます。これで独り占めのつもりだったのですが、淵に潜ると、木で作られた龍が動き出し、欲深な兄は懲らしめられる、というお話です。(明治以前は漆が貴重な現金収入になっていたようです)



次回は、「工房の道具…刷毛、ヘラ」です。

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