中1の冬と銀杏BOYZ「BABY BABY」について

僕は他者から「性」を感じるのがひどく苦手だ。

セクシーな服を着てる人を見ることや、友人のセックスの話を聞くのにも強く抵抗があるし、男女の関係性になりそうになれば、それを避けてばかりで、仮にできたとしても「恋人」という関係性になってからだった。

性が人のあたりまえの生活の一部分なのは理解しているし、自分では性に対する関心がないわけではないけれど、相手を自分の欲望の対象にして消費することや、その当事者になるのが苦手で怖いのかもしれない。

恋愛=性ではなく、恋愛≠性なのだが、どうやら少なくともこの感覚は、一般的にはマイノリティになるらしかった。


この感覚は中学生1年生のときに、初めて感じることとなる。

中学生になると、当然思春期の真っただ中になり、僕の周り(少なくとも男子中学生たちの間)では、セックスと女の子の話題で持ちきりだった。

「○○ってエロイよね」「○○と○○がセックスしたらしい」「○○がAVを万引きしてきたから回し見しよう」

そんなこと本当にどうだっていいのに、クラスメイトたちの頭の中はほとんどそればかりで、わずかにゲームと昨日のテレビの話題があるだけ。

ゲームもテレビもほとんどわからない僕は、そんな環境の中で、未だに少年漫画や大好きなTHE BLUE HEARTSの歌詞に出てくるような、純粋な恋心や愛なんかを信じているような、ある意味変わった少年だった。

必死に周りの下世話な話に関心を合わせ、自分の信じているものを裏切っていく感覚。この頃から、反りが合わず関われば傷ついてばかりだった両親。かつて小学校のときに仲間外れにされたときに助けてくれず、「ONE PIECE」のアニメを勧めてくるような教師たち。恋やら愛やらなんて頭の片隅にも残っていないクラスメイトたち。

中学1年生の僕にとって、世界には偽物しかいなかった。


そんな閉塞感にあふれた世界に、猜疑心しか向けられていなかった中学1年生の冬。僕にとって、運命的ともいえる出会いを果たす。

YoutubeでTHE BLUE HEARTSの音楽を聴いていたときに、関連動画のサムネイルに突然現れた金髪の少女。「BABY BABY」と書かれたそのわずか4分程度の違法アップロードされた音楽。

それは、「未だに恋やら愛やらを信じている、自分自身こそが偽物なのではないか」、そう感じていた僕の頭のもやを、すべて吹き飛ばしてくれた。

BABY BABY
君を抱きしめていたい
何もかもが輝いて 手を振って
BABY BABY
抱きしめてくれ
かけがえのない愛しいひとよ

BABY BABY / 作詞 峯田和伸

銀杏BOYZのボーカルで、作詞作曲した峯田(あえてここでは峯田と呼びたい)は、2018年に開催された音楽フェスVIVA LA ROCK において、ライブ中のMCで、この曲を作った当時、「かけがえのない人」なんて存在しなかった、いつかそんな人が現れたらいいなと思いながらこの曲を作った、と言っていた(と思う)。

この曲を初めて聴いた僕もそうだった。中学1年生の僕にとって、「かけがえのない人」「抱きしめてほしい人」なんて思い浮かばなかった。

ただはっきり、「恋や愛をまっすぐ信じていいんだよ」と、「恋や愛を信じていないやつこそ嘘っぱちなんだ」と、そう言われた気がした。


翌日の放課後、なけなしの小遣いを握りしめて、TSUTAYAのレンタルコーナーまで走って、「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」と書かれたアルバムを借りた。

その日から、僕の鬱屈した青春に、静かに寄り添ってくれる友達ができた。


「自分のために歌ってくれている」

そんな壮大で恥ずかしい勘違いをしながら、僕は年を重ね、大学生になった。


そして、銀杏BOYZは2022年1月15日に18才の誕生日を迎えた。

それと同時に、3月からアンプラグド・ツアーが開催されることが発表された。


高校生の頃にはバイトもできず、大学生になってようやく待ちに待ったライブに行けると思っていたツアーは、未知のウイルスによって中止となった僕にとって、今回のツアーは初めての銀杏BOYZのライブだ。

僕はそのライブで、銀杏BOYZに出会ってからの、たくさんの嬉しかったこと、悲しかったこと、つらかったこと、恋をしたこと、その全部を思い出してしまうと思う。

そんなわくわくと不安の両方をかかえて、すぐにチケットを申し込んだ。


初めて顔を合わせる友達は、どんな言葉をかけてくれるのか。

僕は、どんな顔で、ありがとうと伝えればいいのか。

何もわからないけれど、きっと自分の人生の中で、特別な瞬間になるのだろう。


あふれる自分の気持ちに整理をつけるためにも、初めてnoteを書いた。

もうこの時点で、拙い文章に耳が真っ赤になる思いだけれど。

かけがえのない親友にできるかぎりの感謝を込めて。






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