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[好きな広告を勝手に解説するシリーズ] としまえん ~史上最低の遊園地。~

好きな広告を勝手に解説するシリーズvol.5は、としまえんの広告「史上最低の遊園地。」です。

1990年、バブル崩壊のタイミングでの広告です。

1980年代はエンターテイメントの幅が広がり、いわゆる業界という区分が、顧客の時間視点では多様化が明確になってきた頃です。

俺たちひょうきん族、笑っていいとも、ねるとん紅鯨団が始まりました。おニャン子クラブ全盛期です。東京ディズニーランドがオープン。スーパーマリオブラザースが登場しました。

(若い人は知らないですよね。。ひとつ例にすると、ねるとん紅鯨団は、いまでいうとテラスハウスみたいなものです。えっ、ふるい?)

話を戻します。

楽しめる選択肢が、一気に多様化したのです。プールとしては昭和初期に開業したとしまえん。少し大げさにいうと、遊びといえば缶蹴りだった人のまわりに、あれもこれも目移りしちゃうワクワク世界が突然出来上がったイメージです。

しかも、バブルまっさかり。なんでも楽しい。うかれちゃえ!時代です。バブル前を知らないと、それが浮かれてるとさえ感じていなかったかもしれません。それくらいの熱狂だったんじゃないかと思います。ジュリアナの映像とかみると。

しかし、1989年には消費税が導入されます。たらればを言うと遅かったかもしれません。その後、1990年3月、バブル崩壊です。

みんな、浮かれられなくなりました。というか、浮かれることに、本当は飽きていた。本来は非日常だから浮かれるものなのに、日常になっていたのだから。非日常が日常になると、非日常ではなくなる。でも、まわりが、時代の空気がそうだった。

それでも人はワクワクしたい、に刺す、逆説アプローチ。

1990年3月、バブル崩壊。落ち着きを取り戻します。「楽しいよ!」「うかれちゃえ!」は、一抹の寂しさと、妙な拒否感と、雰囲気としての自己嫌悪感など、切ない交差感情にさいなまされた空気感だったと思います。

とはいえ、です。それでもハッピーに生きていきたいのが人の性。非日常という日常がなくなったおかげで、非日常はきちんと非日常になりましたが、このタイミングで、再度「楽しいよ!」「うかれちゃえ!」と言われても、呪縛的行動抑制がかかります。

そこに、逆接アプローチをしたのが「史上最低の遊園地。」。

「楽しいよ!」と言わずに、「楽しそう」を表現するだけでなく、呪縛から解放し、行動を促すコミュニケーションをとりました。社会の心のハードルをクリアしたのです。コミュニケーションを成立させるために、逆説であることを表明できる数少ないチャンスも見逃しません。エープリールフールを選択。実に動きが早い。バブル崩壊は1990年3月、この広告は1990年4月1日でした。

ベネフィットを素直に表現しないアプローチは、相当な高等テクニックです。いろんな側面での徹底が必要なのですが、表面を真似てコケてる広告も多数存在しているところをみると、この広告は本当に見事ですね。つくってるとき、本当に楽しかっただろうなぁ~。想像するだけで、ワクワクしちゃいます。

ちなみに、平成最後のエープリールフールはもうすぐです。なにかワクワクがおきるのだろうか。プチ期待。としまえん、お願い!(祈)

以上、広告好きの私見でした。

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