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GPTsが出たけど、どうする?

OpenAI Dev Dayで「GPTs」が発表されました。

「GPTs」は、プロンプト、APIコール、学習データを設定して、目的特化のカスタムGPTをめちゃ簡単に作って共有できるため、GPTユーザーは自力で複雑なプロンプトを作る必要がなくなりました。

  • メモを貼り付けるだけでフォーマット化された議事録にするGPT

  • 質問に答えるだけでロゴ画像を作ってくれるGPT

などが簡単に作れて、簡単に組織利用ができてしまいます。

私が生成AIサービス開発者として、この発表で感じた最も重要なことは、OpenAI社は、API提供をするBtoB事業を主軸にするのではなく、ChatGPTでtoC(toE)もゴリゴリに狙ってるということです。

例えば、企業向けにカスタマイズした「チャットAI」や「FAQボット」のサービスが乱立していますが、これはChatGPTで十分なので、本質的には必要なくなりそうです。(セールスレッドグロースを狙うしかない…)

そんな中で、生成AIサービス開発者は、どうすれば新しい付加価値を作れるのでしょうか。


生成AIサービスの構造

生成AIサービスで付加価値を作ることを考えるには、まず生成AIサービスの構造を整理すると、議論がしやすくなります。
結論から言うと、生成AIサービスは、

  • インターフェイス

  • 思考回路

  • データ

の3層の構成要素からなっています。

インターフェイスは、ユーザーから見えるものです。
例えば、ChatGPTのインターフェイスは「チャット」であり、ユーザーから見ると、チャット欄に文字を入力したら、チャットフィードに文字が出力される、というインターフェイスです。

思考回路は、インターフェイスの裏で人知れず行われている、出力を生成するためのロジックです。
例えばChatGPTの思考回路は、入力されたプロンプトとLLMモデルから、確率で出力を生成するものです。

データは、思考回路において利用される知識です。データの量や質、まとめ方が、出力の品質に影響します。

生成AIサービスの付加価値の要素

では、それぞれの要素によって、どのように付加価値を作れるのでしょうか。

要素1. インターフェイス

ChatGPTは、「チャット」というインターフェイスに縛られます。これは汎用的である一方で、特定ケースで使いづらいという大きな弱点があります。

例えば、ご飯屋さんの予約は、チャットのインターフェイスで完結するのは、不安に感じます。下の画像のようなアウトプットを見て、決めづらいです。

「明日の19時に4人で入れる渋谷の焼肉屋を教えて」とチャットした後に

  • 選択モジュール(入力 / お店の雰囲気の写真が4種類提示されて、それをタップするなど)

  • マップモジュール(出力 / 地図上にお店の料理の写真が表示されて、アクセスしやすさが分かる)

など、入力を楽にしたり、出力を分かりやすくするインターフェイスはいくらでも工夫できそうです。

要素2. 思考回路

出力に一定の品質を求めるなら、思考回路はめちゃくちゃ重要です。

先ほどの食べログChatGPTの出力は、忙しい友人とご飯を食べる時間を価値あるものにする上で、お店選びの思考回路が浅く、決断できません。

同じチャット形式でも、しーねぎGPTは、お店選びを決断させることに成功しています。

ここには、しーねぎGPTの思考回路が存在します。その思考回路は3つあり、言語化すると、こんな感じです。

①解釈の思考回路(入力→解釈)
「落ち着いた性格の、30代後半の男性2人が、仕事の話をきっかけに8年ぶりに会う」という入力情報から、

  • 落ち着いた雰囲気で仕事の話ができる

  • 静かすぎると沈黙が目立つから程よくざわざわ

  • 何かしら感性が刺激されるポイントがある

そんな店を選びたいという解釈をしています。

②見解の思考回路(解釈→見解)
①の解釈を検索条件に落とし、お店を選びます。

  • 「落ち着いた雰囲気だが程よくざわざわした店」という解釈から、「照明は暖色系、個室ではない、席の間隔は広め」という検索条件に

  • 「感性が刺激される店」という解釈から、「料理が創作的、内装コンセプト、店主のストーリーがある」などの検索条件に

これらの検索条件を元に、「行った事ある店DB」と「インスタで気になった店DB」から検索をして、見解を出します。

③表現の思考回路(見解→出力)

②の見解として選んだお店を、どのように出力すると、ユーザーが選びやすいかを考えます。表現は、サービスの1つの個性となります。
しーねぎGPTの場合は、場所やホームページURLの他に、シンプルだけど気になりそうなコピー(例:トリュフたまごかけご飯などの創作料理の店)で「表現」をしていました。

要素3. データ

データの質と量が重要なのは言うまでもないですが、もう1つ忘れてはいけない重要な要素があります。

それは「データの学習のさせ方」です。

食べログのデータベースは、お店の量は多いですが、先ほどしーねぎGPTが使った「照明の色、席の間隔、料理の創作性」といったプロパティ(属性)は存在していません。
なので、生成AIサービスとして思考回路を頑張っても、データの学習のさせ方が不十分なので、良い出力に繋がりません。

学習のさせ方の例として、公式のGPTsとして出ている「Laundry Buddy」を挙げてみます。
これは、洗濯に関するFAQボットなのですが、「DO」と「DON'T」のラベリングをして、インハウスデータとしているようです。

Laundry Buddyは、将来的に医療分野への転用を目指していると考えると「DO / DON'T」でデータを学習させる手法を取ったのがしっくりきます。
医療のFAQボットはセンシティブに回答をする必要があり、「DO / DON'T」を明確にし、曖昧なことは言わない、ということが求められます。このように、データに意味のあるラベルをつけて用意する必要があります。

余談ですが、GPTsは、どんな工夫がされているのかを聞くと、いろいろと教えてくれるので勉強になります。

生成AIサービス、どうする?

このように、生成AIサービスの付加価値の変数が

  • インターフェイス

  • 思考回路

  • インハウスデータ

だけと考えると、企業が生成AIネイティブのサービスを作る上で、勝ち方は大きく3つだけになりました。

1つは、汎用的な生成AIサービスとして、インターフェイスをChatGPTより圧倒的に良くし、圧倒的な資金力でプロモーションして勝ち切る

2つ目は、特定業務の生成AIサービスとして、ハイパフォーマンスな思考回路とインハウスデータを持つ生成AIとして勝ち残る

3つ目は、特定業務の生成AIサービスのPaaSや教育事業として、セールスレッドグロースで勝ち残る

各社が路線を決めることになると思いますが、多くの会社は、2つ目の「特定業務の生成AIサービス」が勝ち筋になると思います。
その場合、生成サービスを作るためにすることは、生成AIを学ぶことではなく、「特定業務をより深く理解し、ノウハウを体系化する」ことになります。

自分も生成AIばかりに気を取られず、自分の得意領域のノウハウ体系化をしていこうと思っています。

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