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カッぺと愛しのバーミヤン 【#キナリ杯応募作品】

カッペは激怒した。
「なにゆえド田舎にはバーミヤンを寄越してくれないのか」

私の出身地は青森である。
自他ともに認めるチェーン店弱者だ。

何年も前、セブンイレブンやスターバックスがやっと青森に現れて
ネタじゃなくマジで行列を作ってネットニュースになったことを、
あなたはご存知だろうか?

青森県は全国チェーンの飲食店が進出するのが異様に遅い。

全国制覇まであと数県……となるとだいたい同じ顔ぶれで、
そこには青森県も必ず鎮座している。

コメダ珈琲は堂々のビリだった。
開店日には県内のローカル番組とは言え、テレビのニュースでも取り上げられた

パンケーキやタピオカミルクティーなどの流行りものが地方まで波及するのが遅いのは仕方ない。得てしてそういうものは都市部で星の数ほど浮かんでは消え、根強い熱狂を手にしたものだけが他の地域への進出を許される。

だがなチェーン店はな。
他県で受け入れられてるなら青森で受け入れられないってことはないと思うんだよ。

前述したセブンやスタバでのフィーバーっぷりを見るに、
青森県民は新しいもの好きだ。
というか娯楽がなさすぎて「変化」を常に欲しがってるから、テレビや東京で見かけるものが地元に出来たら並んででも今すぐ体験したい。

――そこで冒頭の叫びである。

青森と中華の関係

さんざん青森はバーミヤン未踏の地かのような書き方をしたが、
実は10年以上前、青森県の十和田市に進出していたようだ(この時もバーミヤン全国制覇にあたり最後の県だったらしい)。

私が個人的にその存在を知らぬうちに、素知らぬ顔でガストに転生して十和ジャス(十和田のイオンのことを県民はこう呼ぶ)に今でも君臨している。

今では幻となってしまった。本当にそこに存在していたのだろうか。
きっとそのままバーミヤンではいられない、
何らかの理由があったのだろう。

考えてみると、青森県民のラーメン好きは異常だ。
ラーメン屋さんは国道を走れば、飽きるほど見かける。

都道府県別ラーメン店舗数 - とどランによれば、2017年の集計で人口10万人におけるラーメン店の軒数が全国で6位
やはり体感だけでなく実際に多いのだ。

ちなみにカップラーメン消費量も全国一位だ。どんだけラーメン好きやねん。
(高血圧・糖尿患者が多いのそういうとこやぞ。せめて運動せえ。)

ラーメンを日常で食べることが多いので、
新規参入が難しいと考えられているのかもしれない。ラーメン屋では餃子もいただける、そうしたら中華屋さんに行く意味はほとんどなくなる。

大阪王将も八戸には来ていないしね。(餃子の王将は青森に進出すらしていない)

そんな環境下で、バーミヤンはきっとうまくやっていけなかったのだ。
だったら家族でそれぞれ好きなものを選べるファミレスのガストに転身するのもわかる。

……そう考えるとやっぱりバーミヤン側が来たくないんじゃなくて、
青森県側がバーミヤンを受け入れられなかったとも言えるのかもな。

私とバーミヤンとの出会い

バーミヤンとは縁がなかったはずの青森県民が、
なぜこれだけバーミヤンを愛しているのかを書いていく。

ここまででさんざん青森を自虐してきた私だが、今現在は茨城に住んでいる。
けして青森が嫌になって飛び出してきたのではないということは、強調しておきたい。

過日、バーミヤンとの初対面を果たした。

その日は平日だったので、夜限定の定食を注文した。
ラーメン、チャーハン、天津飯セット……お得な定食が並ぶ中、
私の目に留まったのは「2種ソースで仕上げた油淋鶏定食」であった。

それと99円アルコールの紹興酒。

端的に言えばどれもめちゃくちゃ旨い。

セットでついてくる餃子に関しては、
私は今までに食べてきた中で美味しくない餃子なんてなかったものだから、
これも例に漏れず美味しい。
そもそもうまくない餃子なんてこの世に存在するのだろうか。

油淋鶏という料理は、私が飲食バイトをしていたときのまかないで大好きだったメニューだ。甘酸っぱいタレとネギの香りが食欲を掻き立てる。

まかないの油淋鶏は正直「唐揚げ」だったのだが、
バーミヤンの油淋鶏は大きな鶏肉をトンカツのようにスライスしたもの。タレが絡みやすく、衣のサクサクだけでなく肉の食感も味わいやすい。

なによりバーミヤンの油淋鶏の特徴は、付け合せのゴマダレだ。

甘酸っぱい鶏肉と相性のいい、ごまの風味と中華の辛味(ラー油だろうか)を感じるタレ。私はこの味の虜になってしまっていた。

紹興酒も、日本酒に少しクセを足したような風味だけれどガツンとは来ない、中華料理に合うようなさっぱりとした味。私は強いお酒が苦手なので、非常に相性がよかった。税抜99円という安さも魅力である。

のちに茨城に遊びに来た家族もバーミヤンに誘ったが、
みんな油淋鶏の虜になって帰っていった。

バーミヤンと私の、今。

私は車を持っていない。バスも使わないので、
最寄りのバーミヤンに行くには、徒歩と電車を介して2時間近くかかる。

でもそれで良かったのかもと思っている。

近所にあったら、私はバーミヤンに貢ぎまくってバーミヤン破産をしていたかもしれない。

たとえ単価が安いお店でも
私には一定の距離を保ち、とっておきの食べ物として味わって食べる存在のほうが有り難みが大きい。

――嗚呼、バーミヤン。

私はお前が好きだ。
この騒ぎが収束したら、お店で出来たての油淋鶏を食わせてくれ。(死亡フラグかな?)
 

いつかの、その日まで。

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