心理的瑕疵で家賃は安くなるのか

 ※不動産賃貸のお話です。

賃貸仲介の現場にいますと、お客さまから「割安な物件情報ありませんか?人が亡くなっててもいいから、安い物件に住みたい。」と事故物件を探してほしいと要望されることがあります。
最近は大島てるさんが有名になり、事故物件というワードが一般の方々へ広がっているように感じます。
余談ですが今年の8月に「事故物件〜怖い間取り〜」というホラー映画が上映されているようで、私は怖いのが苦手なので観ていませんが、映画になるくらい認知度の高い用語になりつつあるのでしょう。

今日はこの「事故物件」というものについて、考えていきたいと思います。

事故物件と心理的瑕疵

そもそも事故物件が「安い」のはなぜでしょうか?
家賃が安くなる理由に「心理的瑕疵」が深く関係しているようです。

瑕疵とは“欠陥”を指す言葉で、心理的瑕疵とは強い心理的抵抗を感じて、賃貸や売買に重大な影響を及ぼす事項のことをいいます。
そのような心理的瑕疵がある物件の賃貸や売買をする際には、必ず告知をしなければなりません。それを告知事項といいます。
その事実を知っていたら「買わない」「住まない」と判断するような事項を予め告知することで、後々トラブルにならないようにすることが目的です。

そして心理的瑕疵のある物件を、一般的に事故物件と呼びます。

心理的瑕疵の定義が実はあいまい

通常、孤独死、自殺、殺人、火事での焼死など人の死に関連する事柄が心理的瑕疵になりうるようです。

令和2年に入り、国交省が「不動産取引における心理的瑕疵における検討会」を実施していますが、曖昧な心理的瑕疵というものにガイドラインを設けることが目的なのでしょう。

現時点では、これまでの判例、事例、慣習などで判断していて、例えば「孤独死でも24時間以内に発見されれば心理的瑕疵に該当しない」、「自殺だとしても直後の入居者へ告知したら、次の入居者は心理的瑕疵にはならないので告知しない」など“心理的”という広い意味で捉えられるゆえ、業者や所有者ごとに様々な解釈で、対応がとられているのが現状です。
また、10年以上前の話ですが、自殺の事実を知らずに入居した入居者が後から自殺の事実を知り、所有者を訴訟した裁判で、自殺から既に数年経過してることと、間に別の入居者が生活していたことがある経緯から、心理的瑕疵には該当しないと、判断されたケースもあるようです。

事故物件の家賃は安くなるのか?

一般的に減額して募集されるケースが多く、減額の大きさでいえば、「殺人」>「自殺」>「孤独死」の順番でしょう。

家賃の減額幅(見込)
・「殺人」5割以上減
・「自殺」5割〜3割減
・「孤独死」3割減〜0

孤独死に関しては、すぐに発見されて室内の傷みが少なければ、告知事項のみ行い、家賃を減額しないケースもあります。
家賃の減額幅については貸す側の意向によるものなので、自殺であっても減額していないこともあります。

事故物件へ安く住めるのか?


年間の賃貸での死亡率が0.05%未満で、その中で孤独死等、心理的瑕疵になりうるケースは一部ですから、更に少ない数です。
また、事故物件といっても家賃を安くしているとは限りません。一等地等の需要が見込めるエリアであれば、安売りせず入居者を見つけることが可能だからです。

心理的瑕疵の度合い、物件自体の需要、大家さんの意向の3つのバランスをもって賃料が決まるので、「事故物件だから安い」と安易に決めつけて契約してしまうと、お得な家賃で安く住むという未来を想像していたのなら、まったく違う結果になってしまうかもしれません。

解決策は、自分自身が物件の相場感をつけることですが、簡単な査定方法などは別の機会にお話したいと思います。

この情報がどなたかのお役にたてれば何よりです。